間もなく開幕。ヤングケアラー問題に着目のK-BALLET Opto『シンデレラの家』

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Bunkamuraと熊川哲也率いるK-BALLET TOKYOが2022年に立ち上げた新プロジェクト、K-BALLET Optoが第3弾となる公演で新作『シンデレラの家』を上演する。振付・演出・舞台美術にイタリアの気鋭、ジュゼッペ・スポッタを招き、現代日本を代表する詩人、最果タヒが原案を手がける意欲作。描き出すのは“現代のシンデレラ”、ヤングケアラーの少女だ。

昨年1月の公演ではプラスチック汚染問題に着目、ペットボトルやビニール傘を再活用し “供養”するという独創的な世界を打ち出したK-BALLET Opto(『プラスチック』)。現代社会に潜む問題をダンス作品に昇華し世界に発信することを目標に発足し、気鋭の振付家によるオリジナル作品や他ジャンルとのコラボレーションに取り組むプロジェクト。日本をリードするバレエ・カンパニーが、決して無視できないさまざまな課題にどんな姿勢で向き合っていくのか、期待を寄せていた。

今回取り上げるヤングケアラーの問題も、核家族化の進行、ひとり親家庭の増加などでより深刻化する可能性のある大きな課題。本公演のために最果タヒが書き下ろした詩集「シンデレラにはなれない」には、ヤングケアラーとして家族の世話を担うも、家族への愛ゆえに家を出ることができない少女の複雑な心情が綴られている。プロコフィエフの音楽による、いわゆる“シンデレラ・ストーリー”とは異なる視点で語られる新たなシンデレラの物語が、ダンスとしてどのように立ち上がるのか──。

衣裳にオニツカタイガーのアイコンモデル“MEXICO 66”を採用 写真:Hajime Watanabe

俊英振付家として注目されるジュゼッペ・スポッタは、イタリア出身。イタリア、ドイツでダンサーとして活動後、振付家として活躍。現在はMiRダンス・カンパニー ゲルセンキルヒェンの芸術監督という、若手注目株のひとりだ。また、彼とともに本作の世界を創り上げる多彩なクリエイターたちの顔ぶれの充実も魅力的。演奏は古い電化製品を「電磁楽器」に蘇らせ演奏する異才の音楽家、和田永。衣裳はジェンダーレスブランド・MIKAGE SHINをリードする気鋭デザイナー進美影。また、メインビジュアルはヒグチユウコ描き下ろしのイラスト。これほどの才能が集結するダンスの公演、刺激的な経験となるはずだ。

ダンサーは、森優貴(K-BALLET Opto アーティスティック・スーパーバイザー)、酒井はな(ゲスト)に、白石あゆ美(ゲスト)、石橋奨也、岩井優花、小林美奈、杉野慧、吉田周平らK-Ballet Tokyoの面々。なによりも、熊川作品を中心とした古典バレエの舞台で活躍するダンサーたちが、より先鋭的なダンスに意欲的に取り組み、輝く姿を観たい。ガラスの靴も王子も登場しないと聞く。さまざまなメッセージが込められるであろう新たなシンデレラの物語、その誕生に立ち会おう。

公演は4月27日(土)〜29日(月・祝) に東京・東京芸術劇場 プレイハウス、8月3日(土)・4日(日) に立川・TACHIKAWA STAGE GARDENにて上演。

K-BALLET Opto『シンデレラの家』トレイラー

文:加藤智子

<公演情報>
K-BALLET Opto『シンデレラの家』

振付・演出・舞台美術:ジュゼッペ・スポッタ
原案:最果タヒ「シンデレラにはなれない」
企画・構成:高野泰寿
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ「シンデレラ」(編曲・作曲:クリストフ・リットマン)
演奏:和田 永 エレクトロニコス・ファンタスティコス!
衣裳デザイン:進 美影(MIKAGE SHIN)

出演:森 優貴、酒井はな、白石あゆ美、石橋奨也、岩井優花、小林美奈、杉野 慧、吉田周平、他 K-BALLET TOKYO

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/k-opto3/

公式サイト
https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/24_opto_cinderella/

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