米大学でガザ攻撃への抗議デモ続く 各地に拡大

アメリカの大学で、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争に抗議する行動が広がっている。当局はこれを鎮めようと対応を強化している。

抗議行動は東部のコロンビア大学やイェール大学で目立っていた。ニューヨーク市にあるコロンビア大では18日、学生ら100人以上が警察に逮捕された。

22日夜には、ニューヨーク大学の抗議行動にも警察が割って入り、多数を逮捕した。

イェール大(コネチカット州)でも同日、学生ら数十人が逮捕された。コロンビア大はこの日、教室での授業を中止した。

これらの大学で見られる、キャンパスにテントを張って野営場所を設営する動きは、西部のカリフォルニア大学バークリー校、東部のマサチューセッツ工科大学(MIT)など、各地の大学にも広がっている。

昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃して以来、双方の間の戦争と言論の自由をめぐり、デモと激論がアメリカ中のキャンパスを揺るがしている。

ハマスの襲撃では、イスラエル人や外国人など約1200人が殺された。その大半が民間人だった。イスラエルによると、ハマスは253人を人質としてガザ地区に連れ去っている。

イスラエルはこの襲撃後、ハマス破壊と人質解放を目標に、これまでにない激しい戦争をガザ地区に仕掛けている。ハマスが運営する同地区の保健省によると、これまでにイスラエルの攻撃で、女性や子供を中心に3万4000人以上が殺されている。

アメリカでは、親イスラエル派と親パレスチナ派の両方の学生らが、反ユダヤ主義とイスラモフォビア(イスラム嫌悪)の事案が増えているとそれぞれ指摘している。

ジョー・バイデン大統領は22日、大学での抗議運動について、「反ユダヤ主義の抗議」と「パレスチナ人に何が起きているかを理解しない人々」を非難すると述べた。

キャンパス内にテントを張って抗議

キャンパスでの抗議運動は先週、ニューヨーク市警察がコロンビア大学のキャンパスに出動し、多数のデモ参加者を逮捕したことで、世界的な注目を集めた。

コロンビア大学は22日、今学期のすべての授業をバーチャルで行うと発表。ミノウシュ・シャフィク学長は、「威圧的で嫌がらせのような行為」があったと述べた。

シャフィク学長は、キャンパス内の対立について、「コロンビア大学とは無関係の人物が、自分たちの目的を追求するためにキャンパスにやってきて、それを利用し、増幅させている」のだと話した。

ニューヨーク大学では、デモ参加者らが経営大学院(MBA)スターン・スクール・オブ・ビジネスの敷地の各地にテントを張った。

他のいくつかの大学と同様、抗議者らは同校に対し、「武器メーカーやイスラエル占領に利害関係のある企業からの資金と寄付金」の開示と放棄を求めている。

22日夜には、警察がニューヨーク大学で抗議者の拘束を開始。133人ほどが逮捕された。

23日には、同大学近くのワシントン・スクエア・パークに数百人の抗議者たちが集まり、市警と大学の対応を非難した。

コネチカット州ニューヘイブンにあるイェール大学では22日、50人近いデモ参加者が逮捕された。

同大学によると、身柄を拘束された人々は、退去を求める「複数の要請」を無視したという。

このほか、カリフォルニア大学バークリー校、MIT、ミシガン大学、エマーソン大学、タフツ大学でも抗議のキャンプが設置された。

ハーヴァード大学は同様の抗議行動を懸念し、キャンパスへのアクセスを制限している。

キャンパスでの抗議活動については、反ユダヤ主義だとの非難も出ている。

たとえば、コロンビア大学近郊でデモに参加していたの一部の人々が、イスラエルへのハマスの攻撃を支持する様子を映した動画が、インターネット上に投稿された。

22日にコロンビア大学を視察した民主党のキャシー・マニング下院議員は、そこでイスラエルの破壊を求めるデモ隊を見たと語った。

コロンビア大学のユダヤ教超正統派グループ「チャバド」によると、ユダヤ人学生が罵声や暴言を浴びたという。

コロンビア大学に所属するラビ(ユダヤ教指導者)が、300人のユダヤ系学生にメッセージを送り、「状況が劇的に改善」するまでキャンパスから離れているよう警告したとも報じられている。

抗議の参加者らは反ユダヤ主義を否定し、自分たちの批判はイスラエル国家とその支持者にのみ向けられたものだと主張している。

23日に発表された声明の中で、「パレスチナに正義を求めるコロンビア学生の会」は、「いかなる形の憎しみや偏見も断固拒否する」と述べ、「私たちを代表しない扇動的な個人」を批判した。

連邦議員らが懸念を表明

コロンビア大学のシャフィク学長は声明で、「この危機に解決をもたらす」作業部会を設置したと発表した。

シャフィク学長は先週、反ユダヤ主義に対する取り組みについて議会委員会で証言した。コロンビア大学は、この状況の解決を迫られている。

エリズ・ステファニク下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)が率いる議員団は22日、「ユダヤ人学生に対するテロ行為を呼びかける学生や扇動者の暴徒に終止符を打てなかった」として、シャフィク学長に辞任を求める書簡を公表した。

一方、ニューヨーク大学の抗議運動については、キャシー・マニング議員、ジョシュ・ゴットハイマー議員など、民主党の下院議員たちが言及している。

ゴットハイマー議員はまた、コロンビア大学についても、ユダヤ人学生が大学に受け入れられ、安全だと感じられないならば、大学は「その代償を支払う」ことになると指摘した。

下院の教育委員会のヴァージニア・フォックス委員長(共和党)は、「コロンビア大学が秩序と安全の回復に失敗し続けている」ことは、連邦政府の援助が条件としていた義務を超えたものであり、「直ちに是正」されなければならないと、インターネットに投稿した。

コロンビア大学の卒業生で、現在はアメリカンフットボールのプロリーグNFLの「ニューイングランド・ペイトリオッツ」のオーナーもロバート・クラフト氏は、この抗議行動を受けて、「是正措置が取られるまで」大学への支援を停止すると警告した。

しかし、大学の一部の教員は、コロンビア大学の抗議行動への対応や警察を呼んだことを非難している。

コロンビア大学の権利擁護団体「ナイト・ファースト・アメンドメント・インスティチュート」は、22日にBBCに宛てた声明で、「早急な軌道修正」が必要だと述べた。

同団体は大学の規則を引用し、外部当局が関与すべきなのは、「人や財産、あるいは大学の各部門の実質的な機能に対する明白かつ差し迫った危険」がある場合に限られると主張した。

「たとえ無許可であったとしても、野営や抗議行動がどのようにそのような危険をもたらしたかは、我々には明らかではない」

ガザ地区での戦争をめぐっては、アメリカ各地でも大規模なデモが起きている。

親パレスチナの抗議デモは、米各地で主要道路を封鎖するなどの形で起きている。コロンビア大での抗議デモの数日前には、シカゴのオヘア国際空港、シアトル・タコマ国際空港、サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジ、ニューヨークのブルックリン・ブリッジなどへのアクセスが制限された。

(英語記事 Israel Gaza: Top US colleges struggle with widening protests

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