用意周到、ディテールにまでこだわった黒田剛監督の辣腕。J1首位にいる戦いぶりはフロックではない【町田】

「町田のほうが相当な準備をしてきた」

FC町田ゼルビアがFC東京を破った試合(4月21日に味の素スタジアムで開催)の後、FC東京の小泉慶はそう言った。この言葉がとても印象深くて、改めて黒田監督(町田の指揮官)のコメントを振り返ると、“周到な準備”が見えてきた。

「デザインしたセットプレーから得点が取れた」
「高さのある選手を上手く起用しながら優位性を持つ。実際、セカンドボールを拾えていて、相手にとって嫌な攻撃になったと思います」
「耐える時間は多くなるだろうし、放り込まれる時間帯もある。耐えに耐え、苦しみに苦しみ抜くことを覚悟して臨む試合になると伝えていました」

FC東京戦に限らず、その先を見据えた黒田監督の采配は、CBのチャン・ミンギュ(今季J1の8節までフル出場)を外して昌子源を先発起用した点から窺える。

「キャンプの時からイボ(ドレシェヴィッチ)と(昌子)源のコンビが落ち着いていて良かったですが、開幕前に昌子が怪我をしてその穴をチャン・ミンギュが埋める形になりました。ただ、3番手になった昌子も腐らず、しっかりとチームを盛り上げ、陰で支えてくれました。

外国籍枠の問題、エリキが(怪我から)戻ってくるこの先のことを考えると、昌子をチームにフィットさせないといけない。いろんなことを考えて、今回のメンバーを組みました。これで勝利できれば自信にもなりますし、目処が立つ。その意味で、今後に繋がる白星だと考えています」

FC東京戦で右サイドバックにスピード豊かな望月ヘンリー海輝を抜擢したのも理由がある。

「今日は相手の両ワイドが非常に速い選手でしたから、そこへの対応、または空中戦で負けないと。彼を中のターゲットにすることでロングスローも活きると。一か八かというよりも、準備の中でやれるという確信を得たので起用しました」

そして出場停止の柴戸海に代わり宇野禅斗を今季リーグ戦で初出場させたのにももちろん理由がある。

「多少なりとも不安はあって、それと背中合わせでの起用でした。宇野禅斗はどちらかと言えばボールを奪取するキャラクターで、危機察知力に長けた選手。ボールを刈り取る力と嗅覚は他の選手よりも抜けている。今日はその宇野を起用してピンチの芽をしっかりと摘み取ると、その意味で90分間奮闘してくれました」

用意周到、ディテールにまでこだわった黒田監督の辣腕。今季J1の9試合を終えて首位にいる戦いぶりはフロックではない。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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