社説:巨大IT規制 独占的支配に歯止めを

 公正取引委員会は、IT大手の米グーグルに独禁法に基づく初の行政処分を科した。

 競合するLINEヤフーへの技術提供を中止し、インターネット広告事業を制限したのは、市場の公平性を損ねたと判断した。

 圧倒的な資本力や技術力を背景に巨大ITが他社を排除すれば、市場が独占に覆われる。商品・サービスの価格決定権を握ることになり、不利益は消費者にも及ぶ。

 巨大ITへの監視を強める欧米とも足並みを合わせ、競争環境を確保する規制強化が急がれよう。

 問題となったのは、スマートフォンなどで検索した語句に合わせた広告が表示される「検索連動型広告」だ。食、美容など関心に沿った商品情報が提供される。購買層を狙って広告効果が高いと国内の市場規模は1兆円を超え、グーグルが7~8割を握っている。

 ヤフーはグーグルから広告配信技術の提供を受け2010年に参入した。不均衡な提携に独占化が懸念されたが「競争関係を維持する」との主張を公取委は認めた。

 だが、グーグルはヤフーに他社サイトへの配信をやめるよう不当に要求し、ヤフーは従わざるを得なかった。制限は7年以上続き、広告主はグーグルしか選べなかったとして、公取委は約束をほごにした姿勢を問題視した。

 ただ、公取委はグーグルが提出した制限中止などの改善計画を認め、重い処分は見送った。早期解決を優先したが、確実に履行されるのか、制度的な担保が必要だ。

 巨大ITの市場支配を防ぐ対応は、欧米が先行している。欧州連合(EU)は今年3月、自社サービスの優遇を禁じるデジタル市場法を巨大ITの6社に適用した。米国当局は3月、他社アプリを妨害したとしてアップルを反トラスト法(独禁法)違反で提訴した。

 日本政府も新たな規制法案を今国会に提出方針だ。スマホアプリのストアや決済システムを他社に開放するよう義務付け、違反への課徴金は国内関連売上高20%分を科す。独禁法による従来の課徴金の3倍超の罰則で歯止めを狙う。

 巨大ITはセキュリティー機能が弱まると訴えるが、利用者の選択肢の確保は重要だ。

 グーグルを巡っては、ネット地図サービスで不当な口コミが削除されず利益を侵害されたとして、全国の医師ら約60人が提訴した。

 検索サービスでも競争をゆがめた疑いで公取委が調査を続けている。グーグルは自らの事業を点検すべきだ。

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