ゆるキャラブームから十数年… 町民投票で決める「公式キャラクター」 町職員や専門家が寄せる期待

観光PRやイベントに欠かせない存在となった自治体の公式キャラクター。一方、宮城県丸森町ではこれまで商工会のキャラクターを借りる形で対応し、「公式」と言えるものはいなかった。そんな丸森町で、町民投票で公式キャラクターを決めようという試みが行われている。その背景には、職員の町づくりへの思いがあった。

遠方からイベントに来るファンも

いまやファンイベントも行われるようになった自治体の公式キャラクター。全国から人を集める力を持っている。宮城県気仙沼市の観光キャラクター「海の子ホヤぼーや」のイベントには、なんと大阪から足を運ぶファンも。グッズの売れ行きも好調だ。

町の顔を決める「町民投票」

観光PRには欠かせない存在となった公式キャラクター。「公式」がいない自治体は今やごくわずかに…
宮城県丸森町もそのひとつだ。
そんな丸森町で4月1日から行われたのが、丸森町初となる公式キャラクターの町民投票。子供から大人まで、興味があれば町に住んでいなくても投票でき、この結果を受けてこれまで町がPR大使としてきた商工会のキャラクター「しょこ丸」に代わり、新たな町の顔としてデビューするキャラクターが決まる。
候補となっているのは2つのキャラクター「まもるもり」と「ne・ko・ga・mi」。このどちらかが町の公式キャラクターに選ばれる。

「らしさ」つまった2キャラクター

「まもるもり」は町の7割を占める「森林」がモデル。大きさも自由自在に変化し、季節によって姿が変わるのも魅力だ。2019年の東日本台風で大きな被害を受けた丸森町。「まもるもり」には森が町を守るだけでなく、暮らしを支える豊かな自然を守っていきたいという思いも込められている。

もうひとつの候補、「ne・ko・ga・mi」。かつて養蚕が盛んだった丸森町では、カイコをネズミから守るため、ネコがよく飼われていた。ネコの供養などのため建てられた石碑は「猫神」と呼ばれ、町内には83基あり、日本一の数を誇る。あまり自慢をしない控えめな町民らしさを、自分のご利益に自信のない神様という設定で表現した。

どちらも丸森町らしさが詰まった個性豊かなキャラクターだ。

公式キャラクターに寄せる期待

なぜ今、公式キャラクターを作ることになったのか?そのきっかけは町職員の研修だった。まちづくりに「デザイン思考」を取り入れようと、民間企業と連携した研修を行っていた丸森町。研修の中で提案されたのが公式キャラクターを通じた町のイメージアップだ。
研修に参加した人たちは、公式キャラクターの誕生にさまざまな期待を寄せている。

「丸森町のものを『これすごいだろ!』と自慢できる人が少ないと感じていた。町に住む人が、もっと町を好きになってくれるようなきっかけに、キャラクターができたらいい」(丸森町 企画財政課 斎藤洋寿さん)

「丸森には何もないという感覚の若い方もいるが、むしろたくさんのものがあると思っているので、それをよりきちんと伝えていきたい。丸森が抱える課題は本当に課題なのかということをもう一度考えてほしいという、きっかけとしてのキャラクターでもある。」(研修の講師を務めた スティーブアスタリスク 太田伸志社長)

キャラクター通じて生まれる『共創』

2000年代後半から始まった、ご当地キャラクターのブーム。遅すぎる登場にも思えるが、地域経済学が専門の宮城大学の佐々木秀之准教授は、キャラクターづくりを通じて、自治体や企業、住民が一緒になって考えることが大切だと話す。
「町づくりは、住民や市民がどうやって参加して、自治体や企業とどうやって共働していくか。一緒に価値を作っていく『共創』というのが今大事になってきている。このプロセスをきちんと踏むことによって町づくりに関心を持つ、あるいは関わってもいいという人が増えるという効果があると思われる。」(宮城大学 事業構想学群 佐々木秀之准教授)

丸森町が町民と決める、初の公式キャラクター。果たしてどちらが選ばれるのか。投票はすでに締め切られており、結果は6月1日(土)に、町の公式ホームページや広報誌で発表する。
(仙台放送)

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