バターがジュンワリ染み込んでゆく。Bakery SANAの「山食パン」【福岡県糸島市】

福岡で10年以上パンブログを続け、2020年には城南区別府にパン喫茶をオープンさせた「pantiki」さん。毎日をリープアップしてくれる福岡のパンを、「ひとぱん入魂」の気持ちで1つずつご紹介いただくこちらの連載。51回目の今回は、福岡県糸島市にある、Bakery SANAの「山食パン」です。

作り手さんの雰囲気が、パンにもそのまま現れているなぁというハナシ。

桜を待っていたのは、つい最近のことのような気もするけれど、すでに初夏のような気候になり、心も身体も戸惑い気味。

ですが、これからの季節、福岡の人気ドライブコースである糸島を訪れる方も、ますます増えていくことでしょう。涼を求めて山&川コースも良し、キラキラ打ち寄せる波を見ながら沿岸コースも良し、ですよね(^^)

今回のお店は、山コース?海コース?どちらの時も寄れるような立地。佐賀方面に行く前に立ち寄って、道中のお供を買うのにも良いかもしれません。糸島市二丈深江のパン屋さん、Bakery SANAさんです。

SANAさんも、糸島の空や海と同様、爽やかなコバルトブルーのイメージ。

小さな可愛らしいお店の前には、パラソルとテーブルもあるので、購入したパンをそこで食べることも出来ます。熱々のパニーニが評判のお店なので、出来立てをその場で頂けるのも嬉しいですね♪

そして、パニーニと同じくらい、有名なのがベーグルです。

元々は関東にお店を構えていらした同店は、福岡にまだベーグル屋さん(もしくはベーグルを置いているパン屋さん)がほとんど無い時代から、本場さながらのベーグルを出して下さっており、まだ若かりしパンオタク(筆者のこと也)も、いそいそと伺った日のことを、懐かしく思い出しております。

あれから早、20年、、、!?(汗)

SANAさんも、福岡の老舗と言われる領域に達せられました。そして、私も歳を取ったのだなぁ、、、(遠い目)

そして最近、温故知新で数度伺ってみましたところ、20年前とは店内の様子やパンの並べ方も、やはり少し変わってはおりましたが、何より印象的だったのは、店員さんから醸し出される雰囲気。より、ほんわかと、柔らかく。威圧感のない「熟成感」と言いますか、若い子のオシャレとはまた違う、大人のゆったりとした『こなれ感』があるようにさえ感じたのです。

そういう伏線もあったからでしょうか、あの頃とは違うチョイス。ベーグルやパニーニ以外のものを買ってみよう。

そして選んだのは、なんだかとても良いオーラを発していたこの山食。見るからにフワフワでは無く。絹か木綿かで言うと、圧倒的に木綿。滋味漂うそれを頂くことにした。

あえて洗練させない潔さを感じる「山食パン」

小ぶりな食パン型のそれは、バゲットの類と同じくらい、シンプルな印象を受ける素材感。粉と水と塩と、、、故に、カリザクッとした頭頂部は弾けるような香ばしさを持ち。

前述の木綿感満載の断面は、トースターで焼き戻すと、これまたカリザクッとした断面になる。故にその、絹とは違う「いい意味で粗めの繊維」の隙間に、バターがジュンワリ染み込んでゆく。理想的なバタートーストの完成也。

対して、カリザクッとした表面に守られた内生地は、ムッチリと歯が沈んでいくような心地よい密度と柔らかさ。木綿、と言っても、荒々しい生地は想像されていませんよね?そうです。決して荒々しいのではなく、あえて洗練させない潔さ。手が、口中が感じる、柔らかい温み(ぬくみ)は、対応してくださった店員さんたちの、清いとさえ感じる優しい笑顔にも似て。

お店も、わたしも、お互い歳をとりましたね、と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、SANAさんに初めて伺ったときの、カジュアルダイナーのようなオシャレ感にワクワクした気持ち。そして今回の、熟成され、こなれた空気が、とても心地よかった感じ。共に歳を重ねているような、勝手な同志感ですが、それがあまりにも嬉しく、誇らしく。

そういうことを思い浮かべながら頂くこの山食は、さらに滋味深さが増すのだよなぁと、ひとくち、さらにもうひとくち。ザクザク故に、パラリパラリと皿に落ちゆく欠片さえも、愛おしく指で拾いながら。そう、まさに思い出を噛み締め、拾い集めるかのように頂いたのでした。

食パン以外で頂いたのはラムレーズン。小ぶりのおやつサイズですが、レーズンたっぷりで食べ応えありました

店舗情報

Bakery SANA

住所:〒819-1601 福岡県糸島市二丈深江555−2[map]

営業時間:10:00〜18:00

定休日: 水・木曜日

駐車場:あり

Facebook:https://www.facebook.com/p/SANA-100054373006915/

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