Opensignalのユーザー体験レポート――楽天モバイルがソフトバンクと肩を並べる7部門、auは5部門で受賞

by 竹野 弘祐

Opensignalは24日、日本国内の2024年4月版「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」を公開した。2023年12月1日~2024年2月28日の期間に、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルそれぞれのユーザー体感を分析した。

レポートは、ビデオやライブ配信、ゲーム、音声、ダウンロード、アップロードといった体験を5Gと5B/4G/3G全体のユーザー体感を分析。また、ユーザーが通信できた時間の指標となる「カバレッジ」や、全体の回線品質も分析している。

全体をみると、ソフトバンクと楽天モバイルが、ほかのキャリアとの共同受賞を含みそれぞれ7部門で受賞。auは5部門で受賞、ドコモはカバレッジ部門で2部門受賞している。

また、同社では空港や東京ドームといったユーザーが集まりやすい場所での調査も実施しており、今回あわせて公開された。

Opensignalのレポートについて

Opensignalのレポートは、ユーザー体感を指標としたエンドツーエンドの体感指標を示したもの。

独立した組織で分析を実施しており、スポンサーはおらず独立した公的なレポートとして提供される。このことから、各国の規制当局やアナリストなどから信頼を得ているという。

2024年4月版「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」

まずは、4月版のユーザー体感レポートを見ていく。

ビデオ体験ではソフトバンクが受賞、全体的に高い数値

「ビデオ・エクスペリエンス」では、5G部門をソフトバンクがスコア77.5で受賞した。次いでau(75.2)、ドコモ(74.9)、楽天モバイル(73.7)と続いており、4キャリアすべてが「非常に良い(68~78)」のスコアを獲得できている。

5Gと4G、3Gを含めた全体の部門では、ソフトバンクが71.4、auが71.3、楽天モバイルが71.0で共同受賞。ドコモは70.1となっており、こちらも高いスコアをキープしている。

ライブ配信体験

ライブ配信でのユーザー体験を測る「ライブビデオ・エクスペリエンス」では、5G部門でソフトバンクがスコア72.6で受賞した。auが71.6、ドコモが70.3、楽天モバイルが67.0と続いている。

全体部門では、auが65.8、楽天モバイルは65.5で共同受賞、ソフトバンクが64.9、ドコモが63.3のスコアを獲得している。

ゲーム体験ではソフトバンクと楽天モバイルが受賞

「ゲーム・エクスペリエンス」では、5G部門をソフトバンクがスコア90.3で受賞した。スコア90を超えたのはソフトバンクだけだった。

次いで、auが87.5、楽天モバイルが83.6、ドコモが80.9となった。

全体部門では、楽天モバイルが84.2で受賞、auが83.5、前回受賞のソフトバンクは82.5で3位、ドコモは78.8だった。

音声アプリ体験

音声アプリでの通話体験を評価する「音声アプリ・エクスペリエンス」では、5G部門でソフトバンクが84.4、auが84.3で共同受賞した。次いでドコモが83.3、楽天モバイルが83.1で、4キャリアすべてで高いスコアを獲得した。

全体部門では、楽天モバイルが83.1で受賞。auが82.7、ドコモとソフトバンクが82.1と続く。

ダウンロードスピード

ダウンロード速度では、5G部門において楽天モバイルが214.5Mbpsとなり受賞した。次点でドコモが166.6Mbps、ソフトバンクが141.6Mbps、auが128.0Mbpsと続いている。

全体部門では、auが50.3Mbpsとなり受賞。ドコモは49.0Mbps、楽天モバイルが45.9Mbps、ソフトバンクが42.3Mbpsとなった。

アップロードスピードは楽天モバイルが5Gと全体それぞれで受賞

アップロード速度について、5G部門では、楽天モバイルが29.5Mbpsで受賞。ソフトバンクが20.4Mbps、auが16.8Mbps、ドコモが9.6Mbpsと続いている。

全体部門でも、楽天モバイルが19.5Mbpsで受賞。ソフトバンクの8.9Mbps、auの8.6Mbps、ドコモの7.7Mbpsと他キャリアを倍以上、上回る差を付け圧倒している。

利用率

ユーザーが実際に通信できたかどうかの目安となる利用率(Availability)の調査では、ソフトバンクが10.2%、auが10.0%と共同で受賞。ドコモが7.1%、楽天モバイルが3.4%と続いている。一方、上昇率をみると、楽天モバイルが前回調査から2.2ポイントで最も上昇している。

全体の利用率では、ドコモが99.7%で受賞した。次いでauが99.6%、ソフトバンクが99.5%、楽天モバイルが99.4%で続いている。

5Gカバレッジはドコモが受賞

5Gカバレッジ・エクスペリエンスでは、最大10ポイントのうちドコモが3.8ポイントで受賞した。auが2.8ポイント、ソフトバンクが2.2ポイントと続き、楽天モバイルは0.7ポイントだった。

前回調査から、ドコモとauは0.4ポイント、ソフトバンクと楽天モバイルは0.3ポイントそれぞれ上昇させている。

一貫した品質はソフトバンクが受賞

回線全体の評価を見る一貫した品質(Consistency Quality)調査では、ソフトバンクが84.3%で2年連続で受賞した。

次いで、楽天モバイルが83.4%、auが82.2%、ドコモが82.1%と続いている。

空港やイベント会場での調査結果

続いて、ユーザーが多く集まるスポットでの調査結果も示された。これらの調査では、全国平均との比較も行われている。

空港では課題が多い

全国の主要23空港で調査を実施したところ、5G利用率が13.4%と全国平均の7.2%の2倍近いスコアとなった一方、圏外となる時間が5.0%と全国平均(0.4%)より劣る結果となった。

プリンシパル・アナリストのロバート・ヴィルジコウスキー氏によると、日本の空港は都市部から離れた場所であることが多いことや、セキュリティ関係などで施設内に電波を遮る壁などの障害物が多いことが理由だと分析する。

キャリア別に見ると、ドコモがダウンロード速度で第1位、楽天モバイルがアップロード速度で第1位を獲得。

5Gビデオ体験ではソフトバンクが、音声アプリ体験ではauがリードしている。また、5Gの利用率と4G/5G利用率では、auがそれぞれ1位となった。

東京ドームでの調査

同社では、テイラー・スウィフトの来日公演にあわせて、同期間中に東京ドームでのユーザー体験調査を実施した。

この調査では、オーストラリアやシンガポールで実施された公演とのユーザー体験を比較したレポートとなっており、一貫した品質で東京ドームが3会場中1位を達成。圏外となる時間も、ほかの会場と比較して短かったとしている。

繁華街でつながりにくい問題、今後さまざまな地点での計測を検討

近年、東京 渋谷などの繁華街で、携帯回線がつながりにくい事象が発生している。今回のレポートでは、4キャリアすべてが利用率99%を超えており、レポートでは明確になっていない。

ヴィルジコウスキー氏は、レポートには現れていないとしながらも、計測するポイントがどこかによって、同じ日本国内でもかなり変わってくるとコメント。今後も、別の計測ポイントで体験の変化を見ていきたいとした。

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