【獣医師が解説】意外と春に多い?!犬の"熱中症"についての基礎知識

️熱中症ってどういう状態?

昨今、子供が車内に取り残され熱中症により死亡してしまう悲しいニュースが流れてきます。厚生労働省により人間の熱中症は以下のように定義されています。

『「熱中症」とは高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節などの体内の重要な調節機能が破綻するなどして発症する障害の総称』

この定義はおおよそ動物にも当てはまると考えられ、人間と同様に重症化すると命に関わる緊急疾患です。

犬での具体的な症状として

  • 過度のパンティング(ハァハァする呼吸状態)
  • 異常な量の流涎
  • 嘔吐や下痢といった消化器症状
  • 痙攣発作
  • 意識消失

などが認められます。

️犬の熱中症の危険因子

犬が熱中症になってしまうには様々な危険因子が存在します。

1、環境要因

  • 高温多湿
  • 直射日光への長時間の暴露
  • 飲料水不足

暑い環境へ長時間さらされる事により体温が上昇することで臓器への熱損傷、また飲み水が不足していることで脱水も進んでしまい、循環不全に陥ります。

2、動物側の要因

  • 肥満
  • 循環器、呼吸器疾患に罹患している
  • パグやフレンチブルドッグなどの短頭種
  • 老齢犬
  • 過度な運動

肥満犬や短頭種は気道が狭く、呼吸による冷却作用が通常犬と比較して劣っています。また放熱不良もあり、体温が低下しにくいことも熱中症を助長させます。

3、持続する痙攣発作

何らかの疾患により痙攣発作が引き起こり鎮静化できず長時間続くと、労作性熱中症と言って、筋肉の痙攣による熱産生で体温が上昇してしまいます。

️これって熱中症かも?!緊急時の対応

「朝まで元気だったのに何だかハァハァしてぐったりしているかも・・・」

もしかしたらそれは熱中症のサインかもしれません。まず飼い主としてできることをやっていきましょう。

1、冷却する

持続する高体温は様々な臓器への悪影響が懸念されます。まずお家でできることは冷水を愛犬にかけて身体を冷やしてあげることです。

全身を濡らし、扇風機の前に寝かせてあげたり、首やお腹、頭など、重要な血管や臓器があるところを集中的に冷やします。この時「氷水は使用しないように」しましょう。

過度に冷却すると、末梢血管が収縮してしまい、うまく放熱できなくなったり、状態の悪化を促進する場合があります。

2、水分を与える

熱中症により脱水している可能性があるため、意識がある犬であれば飲水を促しましょう。

自力で水が飲めない場合や意識がない場合、無理に飲ませることにより誤嚥してしまい、肺炎などを引き越す可能性があります。その場合は無理をせず、すぐさま動物病院を受診してください。

3、かかりつけ病院へすぐに連絡、もしくは受診

もしかかりつけの動物病院が開いている時間帯であれば迷わず受診しましょう。

熱中症の程度によっては様々な検査や処置が必要であり、場合によっては入院することもあります。

️熱中症の予後

熱中症は早期発見、早期治療が望まれます。

長時間の異常高体温は脱水だけではなく、吐血や血便などの重篤な消化器症状、腎機能の低下や肺への影響、脳障害、全身性の血栓形成傾向を引き起こし、予後不良因子が増えてしまいます。

様々な臓器への影響があればあるほど死亡率も上昇します。

️熱中症から愛犬を守るためにできること

どんな気温になっても大丈夫なように、日頃から室温を一定に管理したり、外出先から室温を確認、コントロールできるスマホアプリやスマート家電の導入。

水は常に切らさないように十分量用意しておく、など簡単なことで愛犬を命の危機から守ることができます。

️まとめ

「また夏じゃないし大丈夫だよね?」

熱中症は夏だけの問題ではありません。そして引き起こしてしまう要因としては飼い主の管理不足が招くことがほとんどです。

自分で予防できる病気は何としてでも引き起こさないよう、できることを把握し、発症予防に徹底していただくことをお勧めします。

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