ヨーロッパで成功できるか否か。かつてボーフム(ドイツ)などに在籍した鄭大世氏に「成功できる条件は?」と問うと、少し難しい表情した後に「運です」と言い切る。ただ、自身のケースは違ったという。
「そもそも全てが運ですが、僕の場合、(ヨーロッパで大きな成功を掴めなかったのは)メンタルです」
欧州挑戦の一歩目は良かった。
「僕は(2010-11シーズンに)ボーフムで活躍できたんです。スタメンを取って、(公式戦で)二桁ゴールを決めていいスタートを切れたんです」
しかし、2011-12シーズンからは…。ボーフム、続くケルンでなかなか結果を出せず、当時を振り返って「完全に(失敗したのは)メンタルだったな」と繰り返し言った。
「(ヨーロッパから日本に)帰ってくる人たちのメンタルは分かります。やっぱり寂しいし、Jリーグの時のスター感はないし、ただひとりで寂しく時間が過ぎていくだけ。Jリーグ時代に浴びたナイターの光が懐かしくなる」
いったい、鄭大世氏が指すメンタルとは何か?
「良くない時にどういうメンタルでいられるか。上手くいってない時にどれだけ自分のプレーを貫けるかが一番大事です。Jリーグもそうですが、海外に行ったらなおさらです。エゲツない孤独感との戦いなんですよ。Jリーグなら日本語で話せるし、家族もいるから腹の底から笑えるんです。でも海外に行くと、それができなくなる。なので、孤独に打ち勝つ精神力は不可欠なわけです」
そんな鄭大世氏は「(当時)結婚していたらまた違った」とも言っていた。支えてもらう人の存在は、メンタルを安定させるうえで重要ということだろう。
構成●サッカーダイジェストTV編集部