刑期終え出所日の朝に渡す縫いぐるみ ボランティアが「フクロウ」に込める願い

縫いぐるみの寄贈について話し合うメンバー=浜田市内

 浜田市旭町丸原の刑務所・島根あさひ社会復帰促進センターの受刑者は、刑期を終えて出所する日の朝、フクロウの縫いぐるみをプレゼントとして受け取る。社会復帰後のお守りとして身に着け、再犯を思いとどまる元受刑者もいるという。手作りする地元の女性ボランティアに縫いぐるみに込めた思いを聞いた。

 4、5センチほどの手のひらサイズ。水玉や花柄、目が離れ気味など一つ一つ見た目が違い、個性や愛くるしさがある。1961年7月の結成以来、犯罪や非行防止に向けた啓発活動などに取り組む地元の女性ボランティア団体「浜田地区更生保護女性会」のメンバーが作っている。

 腹用と背中用の2枚の布を縫い合わせて綿を詰め、刺しゅう糸でくちばしを作り、目玉を付けて仕上げる。布の組み合わせを変えるなど見た目が同じにならないよう工夫している。

 浜田、金城、旭、弥栄、三隅の市内5支部のメンバー約120人が手分けして作る。「ふくろうは『幸福を運ぶ神』。願いを込めて」と書かれたメッセージカードを添えて袋詰めし、一つ一つリボンをかける。

 2008年10月にセンターが開所したのを受け、当時のメンバーが「出所者の更生を支援したい」と発案。09年3月から毎年、出所者の数だけ縫いぐるみを作り、活動は今年で15年目を迎えた。これまで作った個数は9482個を数える。

 「幸福を運ぶ鳥」とされるフクロウを選んだのは「出所後は幸せな生活を送ってほしい」との思いからだ。取り組み開始時からのメンバーの一人、白川則子会長はセンターの周年記念式典で聞いた「お守りとしていつもかばんに入れている。縫いぐるみを見て浜田を思い出し、弱い心を断ち切っている」との元受刑者の言葉が心に残っている。白川会長は「家庭環境に恵まれなかったなど、さまざまな要因で罪を犯す人がいる。出所後は幸せが訪れ、二度と犯罪に関わらない生活をしてほしい」と目を細める。

 3月下旬にはメンバー7人がセンターを訪問し、24年分の500個を贈った。出所日までセンターで保管し、職員が手渡す。寄贈を受けた田中秀樹センター長は「出所者の社会復帰に多大な貢献をされ、深く感謝する」と述べた。

 コロナ禍による雇用悪化などを背景に、20年の全国の再犯率は過去最悪の49.1%に上った。そんな時代だからこそ、メンバーはフクロウが心のよりどころになり、浜田から人生の再出発を目指してほしいと切に願っている。

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