輪島塗はアイデンティティ 地元住民レスキューで次世代につなぐ

地震で被害を受けた住宅や倉庫の片付けが進む中、保管場所がなくやむを得ず捨てられてしまう伝統工芸品。このような工芸品を引き取り、希望する人に受け渡す取り組みが被災地で始まっています。

能登地震地域復興サポート・船下智香子さん「形は同じもので入れましょう、紋入りと紋無しっていうのを分けて入れる。すごいな何から入れるかな~」

能登の食文化や伝統工芸を守る活動を行う一般社団法人・能登地震地域復興サポート。いま、進めているのは災害ごみとして捨てられてしまう輪島塗を救う取り組みです。先頭に立つのは能登町出身の船下智香子さん。

能登地震地域復興サポート・船下智香子さん
「みなさん置く場所がなかったり、震災にあわれてやむなく捨てられるっていうのをなんとかお預かりして未来に繋げるお手伝いができないかと」

能登地震地域復興サポート・ベンジャミン・フラットさん
「これ珠洲からですね、潰れた蔵ですね。これ1つの蔵、22日行きました。入ってびっくり、とても多い」

並べられている木箱は全て、珠洲で被災した蔵から引き取ったもの。輪島塗の御前や食器1000点以上がひとつひとつ和紙に包まれ大切に保管されていました。

この日はボランティアも加わり、洗浄作業が進められました。

ボランティアとして参加・波間舞さん
「まず輪島塗に触れたときにすごく滑らかでびっくりして、今まで触れた塗りの製品と全然ちがうと思って」

丁寧に洗うことで、何度も漆を重ね塗りして作り上げられる輪島塗ならではの美しさが戻ってきました。引き取った輪島塗は丁寧に磨かれたあと、大切にしてくれる希望者に譲られます。

能登地震地域復興サポート・船下智香子さん
「皆さんそれぞれ今まですごく大事にしてこられて、きのうの方もこれ最後に使ったのは自分たちの結婚式、50年前にされた結婚式の時に最後に使ったと仰っていた。そういう思い出とかストーリーとかもお聞きして次の方に「こういう御膳ですよ」っていうのをお伝えしたいなと思っている」

これまでに10軒以上の住宅から引き取ったという輪島塗の数々。中には大正の文字が刻まれているものもありました。「輪島塗は能登の人のアイデンティティ」と話す船下さんが大切にしたいのは、器だけではありません。

能登地震地域復興サポート・船下智香子さん
「輪島塗ってただの器というか、漆器というだけじゃなくて、どんなお料理をのせるかとか、どんな人と過ごすとかそういうものだから、そういうものも含めて次の世代につなげられたらいいなと思ってます。」

© MRO北陸放送