10人で勝利も「中国戦」で足りない「連携」と「2点目」と【アジア杯GL3戦で分かったU-23代表「パリ五輪出場」への大問題】(2)

韓国に敗れて悔しがるチームメイトに手を差し伸べるU-23日本代表の藤田譲瑠チマ。撮影/中地拓也

サッカーU-23日本代表が、パリ・オリンピック出場権をかけた熾烈な戦いを、カタールの地で続けている。U23アジアカップでは、グループリーグ2戦目で決勝トーナメント進出を決めるも、グループ最終戦でライバル・韓国代表に0-1で敗れた。この「日韓戦」他、グループリーグ3試合から分かった、若きサムライブルーたちの「現在の実力」と「今後の課題」を、サッカージャーナリスト後藤健生が徹底検証する。

■17分の一発退場「守備的な戦い」は当然だった

もちろん、一つひとつの試合の流れを見れば、得点が少なくなってしまったそれなりの事情はあった。

中国戦は、8分という早い時間帯にCKの流れから山田楓喜が上げたクロスに正確に合わせた松木がボレーで決めて日本が先制した。

しかし、17分にはDFの西尾隆矢が相手の挑発に乗って一発退場となってしまう。

アディショナルタイムを含めれば、80分もの時間を1人少ない状態で戦わなければならなかったのだ。

そこで、大岩剛監督は守備的な戦い方を選択した。

日本では、こういう状況で守備的な選択をすると、必ずのように批判を受ける。それが、日本のサッカー文化なのかもしれないが、このときのシチュエーションでは、守備に入るのは当然の選択だった。

ポイントは、退場処分が前半17分という早い時間だったこと。そして、この退場の前に日本はすでに1対0でリードしていたことだ。

たしかに数的劣勢にあっても「攻めの姿勢を失わない」ことは大事だ。だが、10人で80分を戦わなければいけないのだ。限られたエネルギーを守備面に割くのは当然のことだ。

■称賛に値するトップ細谷真大「パスコース」制限

そして、「1点リード」という状況を最大限に活用して戦う。失点さえしなければ、相手は焦りを生じるから、そこでカウンターで仕留めれば、それが最高のシナリオとなる。

大岩監督はセンターバックの木村誠二を投入して4人の最終ラインを再構築。そして、藤田譲瑠チマと松木玖生の2人をボランチとして、前線はトップに細谷真大、両サイドに山田(右)と平河悠(左)を置き、戦い方も守備的にシフトした。

11人がそろっている状況では、前線からのハイプレスでボールを奪いに行っていたが、人数が少ないと前線からのプレスは不可能だから、トップの細谷真大は深追いはせずに、相手陣内に10メートルほど入った位置で相手を追いかけてパスコースを制限する(ほぼフル出場して、その作業を続けた細谷は称賛に値する)。

中盤では藤田譲瑠チマと松木の2人がよく守った。

藤田はボール奪取能力を生かして最終ラインの負担を軽減させ、状況判断に優れた松木は最終ラインで守備に参加していたかと思えば、チャンスには前線に飛び出すなど、豊富な運動量で人数の差を埋めた。

こうして、前半38分に陶強龍のシュートがクロスバーの下を叩くというピンチもあったが、日本は中国の攻撃を90分間でシュート10本に抑えることに成功した。

最後までハードワークを続け、攻撃に移りたい気持ちを抑えながら、割り切って守備に徹する難しい戦いを続けた選手たちの冷静さは称賛に値する。

■数的劣勢の中で「必要とされる」2つの戦い方

今回のU-23日本代表に招集されている選手の多くは、すでにJリーグで主力として活躍している。「U-23に選手を抜かれたので戦力ダウン」と言われているチームがいくつもあるのだ。

そして、Jリーグは、アジアでは最も競技力の高いサッカーリーグだ。

そのJリーグで主力として戦っている彼らは(少なくともアジアのレベルでは)、選手としての完成度が非常に高い。90分を戦え終えた後、日本の選手たちが余裕のある表情を見せていたのがとても頼もしかった。

もちろん、戦い方が完璧だったわけではない。

数的劣勢の中で戦うとき、守備を楽にするためにも、ボールを奪ったら、そのボールをつないで攻撃の形を作ることが大事だ。攻め切って得点するまでは至らなくても、攻める形を作ることで守備陣を立て直す時間を作ることができるし、相手選手を少しでも自陣から遠ざけることができる。

中国戦の日本は、守備的な戦いを選択したといっても、もう少しボールをつなぐ場面を作りたかった。

また、後半に入ってからは、カウンターからいくつかチャンスを作ることに成功した。

最大のものは71分。左サイドで交代で入ったばかりの佐藤恵允が、いったん奪われたボールを奪い返して、そのままドリブルで持ち込んだ場面。その流れからゴール正面で獲得したFKから、松木がFKから無回転系のシュートで直接狙った。

佐藤は85分にも細谷がつぶれながらつないだボールをドリブルで持ち込んだのだが、最後のタッチが大きくなりすぎてシュートできなかった。

こうしたカウンターの場面で2点目を奪うことができれば、完璧な試合運びだったのだが……。

【この画像の記事に戻る】

© 株式会社双葉社