DNA鑑定の信用性めぐり両者の主張は平行線 やり直し裁判は5月22日結審へ【袴田事件再審公判ドキュメント⑭】

静岡県の旧清水市(静岡市清水区)で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で死刑が確定している袴田巖さん(88)の再審の第14回公判が4月24日、静岡地方裁判所で開かれました。今回の焦点は前回に引き続き「DNA」です。
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<袴田巖さんの姉ひで子さん>
「もう、きょうで、最後だと思ってる、私はね。次は5月22日はおまけだろうと思っているんですよ」

1966年、旧清水市で一家4人が殺害された「袴田事件」。死刑判決を受けた袴田巖さんは無実を訴え続け、2023年からやり直しの裁判=再審が静岡地裁で開かれています。

2024年4月24日、14回目を迎えた再審公判。争点となったのは、前回に引き続き、「DNA型鑑定」です。

事件をめぐっては袴田さんの逮捕から1年2か月後に、現場近くのみそタンクの中から、犯行着衣とされる「5点の衣類」が見つかります。このうち、半袖シャツの右肩についた血が袴田さんと同じB型であることが死刑判決の決め手となりました。

約10年前、再審開始を求めていた弁護団は、「5点の衣類」の血液のDNA鑑定を実施しました。法医学者の本田克也・筑波大教授による、いわゆる「本田鑑定」です。

前回4月17日の公判で弁護側は、これまでの鑑定は標準的な方法や機器を採用していて、その結果は信頼できると主張。「5点の衣類は袴田さんが着ていたものではない」と無罪を訴えました。

一方で検察側は、鑑定に使われた5点の衣類の断片のDNA量はごくわずかで、劣化して型判定は困難になっていた可能性を指摘。「由来不明のDNA型が混ざっている可能性があるため鑑定結果は信用できず、袴田さんが5点の衣類を着ていた可能性を否定できるものではない」など反論していました。

14回目の公判でも、DNA鑑定の信用性については、弁護側と検察側で主張は平行線をたどっています。

検察側は「5点衣類」に第三者が触れる機会が、80回以上あったとして、実際に触れている写真などを示し、弁護側のDNA鑑定は、別の由来のDNAが衣類に付着している可能性があること。また、「本田鑑定」で採用されている「選択抽出法」では、血液だけを分離することができないことや、他の専門家を経由していない不自然さなどの恣意的なやり方は、信用性に欠けると改めて、指摘しました。

2023年から始まった、袴田巌さん(88)のやり直しの裁判=再審は、5月22日に開かれる公判で結審する見込みです。袴田さんの姉、ひで子さんが意見を述べるほか、事件の被害者遺族も書面にて意見を述べる予定で、どのような内容が語られるのか注目されます。

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