奥智哉、俳優人生で転機となった“出会い”明かす 同年代との共演に感じる“せめぎあい”

奥智哉と前田拳太郎がW主演を務めるドラマ『君とゆきて咲く~新選組青春録~』が、テレビ朝日系で4月24日よりスタートする。

手塚治虫の漫画『新選組』をドラマ化した本作。父を斬殺された深草丘十郎(奥智哉)は、仇を討つべく、新選組に入隊を決意する。試験で出会ったのは、剣の達人・鎌切大作(前田拳太郎)。彼と共に熱い友情を育んでいくが、いつしか互いに殺し合わなくてはならない運命を迎えて……。

今回は近年、ドラマ・映画で抜群の存在感を見せる奥にインタビュー。話を聞くと、美しい瞳の中に潜む蒼き炎が見えてきた。

「現場でわかることもあるから、お芝居って面白い」

ーー『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系)以来の前田拳太郎さんとの共演です。再共演についてはどんなことを思いましたか?

奥智哉(以下、奥):当時はまだ右も左も分からない状態だったので、またこうして同じ作品に出て、W主演をさせていただけるのは縁を感じます。撮影でも、お互い学んできたことを出しあい、刺激しあえているのですごく楽しいです。『仮面ライダーリバイス』のときは、みんながそれぞれ自分のことで一生懸命になっていて、それに鼓舞されていましたけど、今回はまた違った影響のしあいができていますね。嬉しいです。

――時代劇にはどんな印象を持たれていましたか?

奥:喋り方、姿勢、歩き方、走り方ひとつとっても所作がしっかりしているのが、僕の想像している時代劇です。今回は、そうした時代劇の良さも残しながら、衣装が派手だったり、ヘアメイクだったり、今の若い子たちにも好まれるような部分を取り入れていて、今までにない新しい時代劇だなと思います。

――もともと新選組には、どんなイメージを持たれていましたか?

奥:中高で歴史を学ぶ上で、やはり新選組は外せないところですし、特に僕は中二病を患ってきたほうなので……。

ーー(笑)。

奥:刀を振るって敵をバッサバッサと斬っていく新選組には憧れがありましたね。中でも、山南敬助が好きです。

――殺陣のシーンもありますが、実際にトライしてみていかがでしたか?

奥:初めて木刀を持って基本稽古をしたときは、足と腕がプルプルになって、“本当にやっていけるのかな?”と不安があったんですけど、アクション部の方からも「毎日素振りをするように」と言われていたので、基本稽古を続けていました。いざ殺陣をやってみると、素振りを毎日やっている分、刀の振り方も様になって、カッコよく見えたんです。“稽古は無駄ではなかったんだな”と実感しましたし、小さいことですけど、日々積み重ねることが大事なんだなと思いました。

――先日、前田さんと殺陣のシーンを撮影したとお聞きしました。

奥:クランクイン前からふたりで練習して本番を迎えたんですけど、お互い練習とは違った気迫だったり、熱だったりを感じて楽しんでいたような気がします。あるシーンでは、殺気がこもっていましたし、緊迫した空気を感じられたので、めちゃめちゃ痺れました。

――丘十郎に関してはどんなキャラクターだと捉えていますか?

奥:基本的には、まっすぐで純粋で本当にかわいらしい子なんですけど、でも生きている目的が「父親の仇」というすごく重たいもので……。それ故に、危なっかしさもあるのかなと思います。丘十郎がごはんを食べているときや、他の隊士と喋っているときなどに、“本当に楽しめているのかな?”と思うこともあって。復讐という目的で新選組に入り、父親の仇のことを考えているので、その場の空気を楽しんでいいのか? そんな迷いや揺らぎみたいなものを感じますね。

――物語が進む中で丘十郎も成長していくと思います。演じるうえで意識していることはありますか?

奥:丘十郎も隊士とのコミュニケーションを通じて、いろんなものに気づかされて、成長していくんですけど、台本を読んでいる時点ではまだ分からない気持ちや、相手のお芝居を受けてから気づく感情もあって……。“この台詞で丘十郎は気づかされたのか”とか、“この人に言われた台詞が一番響いているんだな”とか、現場でわかることもあるから、お芝居って面白いなと思います。

――今回、オープニングやエンディングでダンスシーンがあるそうですね。得意・不得意でいうとどちらですか?

奥:めちゃめちゃ不得意です(笑)。本当にマズいです。僕はリズム感がなくて、ついていけないんですよ。1、2、3、4……とカウントもよく分からないんです(笑)。

ーー今回は座長の立ち位置ですが、現場での意識は変わるものですか?

奥:“作品を良くしたい”という気持ちは、より強いかもしれないです。例えば、殺陣のシーンでも、もっとこういう技ができたら物語が盛り上がるんじゃないか、視聴者の方も喜ぶんじゃないか、と考えるようになりましたね。先日も、前半で完成されていない技を、物語後半でさりげなく入れられたら、丘十郎の成長を感じられて面白いんじゃないかな、と思って、アクション部の方に相談させていただくこともありました。

「正解がないもののほうが好き」

ーー「同年代とタッグを組んでドラマを作る」ということに関してどう感じていますか?

奥:今までベテランの方とお芝居をする機会が多く、とても勉強になっていたんですけど、同世代とお芝居をするとなると、ベテランの方のときとは違う、“せめぎあい”みたいなものを感じます(笑)。僕だけかもしれないですけど、“もっといいお芝居がしたい”、“自分はもっとできるんじゃないか”と思っちゃうんですよね。そういった向上心、モチベーションが上がりやすいなと思います。

ーーデビューして約4年。俳優として活動していく中で、やりがいを感じるときってどんな瞬間ですか?

奥:共演している役者さんとのお芝居がうまく噛み合ったときが一番成果を実感するというか。やっていて良かったと思いますし、“やっぱりお芝居って楽しいよね”と思いますね。自分は飽き性なところがあるんですけど、それに関して言うと、お芝居は全然飽きがこないんです。

ーー「正解がない」というのも作用しているのでしょうか。

奥:そうですね。僕、ゴリゴリの文系なので、そういった正解がないもののほうが好きなのかもしれないです。

ーーデビュー当時から作品との向き合い方には変化がありましたか?

奥:おそらく、デビュー当時は自分のことしか考えていなかったんですが、今は主演ということもあって、周りのキャストともコミュニケーションをとろうと思っています。どういうことで悩んでいるのか、どういう芝居をしたいのか、意見交換して共有することは大事だと思うので、デビュー当時よりは意識が変わったんじゃないかなと思います。常日頃から、“何かもっと新しいことができるんじゃないか”と思いながら現場にいますね。

ーーさまざまな作品に出演するなかで、成長を実感することはありますか?

奥:作品ごとに違う何かを学んで、学んだことを次の作品に生かして……と、繰り返せてはいるので、成長はしているんじゃないのかな、と思います。

ーー『君とゆきて咲く』の現場で学んだことがあれば教えてください。

奥:「引き出しの多さは大事だな」と実感していますね。最近は、時代劇だからと言って固くならず、“時代劇だからこそ、もっと自由にやっていいんだ”と思っています。特に物語の前半とのギャップを出すためにも、後半では新しい一面を見せられたら面白いのかな、と思いますね。

ーー俳優人生を歩む中で「この出会いは大きかった」と思うエピソードは?

奥:『十角館の殺人』(Hulu)で内片輝監督とご一緒したのが、自分の中では転機だなと思っています。「相手のお芝居を受けて、感じたことを相手にパスする」ってお芝居の基本だと思うんですが、監督は、今まで自分が感覚的にやっていた部分を、丁寧に言語化して教えてくれたんです。改めて言葉で教えてもらったときに、自分の中でしっくりきたというか、それ以降、少しでも納得できるお芝居に近づいたような気がします。もちろんまだまだですけど、ちょっとはいい方向に進んだのかなと思いますね。監督との出会いは、自分の中でとても大きい出来事でした。

ーー奥さんは今年20歳になります。俳優としてどんな未来を見据えていますか?

奥:「自分主体ではなく、作品全体を見通してお芝居に臨める俳優さんになりたい」というのがひとつの指標です。独りよがりなお芝居をしたとき、自分は良くても、作品全体で見たら、いい方向には進んでいないですよね。やはり、作品が盛り上がるようにお芝居をすることが大事。そのことを意識して演じられる俳優になれたら、また一歩進めるのかなと思います。
(文=浜瀬将樹)

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