【衆院島根1区補選】投票率低下を危惧「政治に緊張感を」カギは若者の投票行動

4月28日に投開票を迎える衆議院島根1区補欠選挙について、今回は低下が懸念される投票率について考えます。今回は島根県初となる「補欠選挙」という特殊な事情もあいまって一層の低迷が危惧されます。こうした中、特に投票率の低さが指摘されるのが若者です。その若者と政治との距離を近づける活動を取材しました。

島根大学の松江キャンパス。

島根大学法文学部学生:
「お疲れ様です。持ってきました」

法文学部の学生が教室に持ち込んだのは、実際の選挙でも使用される「本物の投票箱」です。

島根大学法文学部学生
「これは松江市の選挙管理委員会から貸してもらいました。ある意味、重みを感じますね」

この本物の投票箱、行政学ゼミの学生が企画する「こども投票」で使用します。「こども投票」とは、選挙権を持たない子どもたちが、本当の選挙の投票日に実際の投票所で模擬投票してもらおうという取り組みです。未来の有権者に将来の投票行動へ繋げてもらおうと、2年前の参議院選挙から学生が中心となって企画・運営しています。今回の補欠選挙でも投票日の28日、松江市内の2カ所で行う予定です。

島根大学法文学部学生
「子ども達から候補者へのお願いやメッセージを書いてもらうものです。キャラクターショーを開いて欲しいとか、もっとラーメンが食べたいというかわいいものから、研究所を島根に作って欲しいという大人にも負けない意見までありました」

こうした活動をする学生がいる一方、同じ若い世代の選挙への関心はというと…。

Q補欠選挙の話題は出る?
「正直全然出ないですね。大学の授業で忙しいとかバイトがあるとか恋愛とかいろいろある中で、選挙の優先度は低い。(周りは)面倒くさいとか思っている人の方が多いと思います」

この活動のアドバイザー役を務める島根大学法文学部の毎熊教授。授業に出席する約180人の学生に対して、今回の補欠選挙に関心があるか尋ねたところ「関心がある」と回答した学生は半数以下でした。
島根県の国政選挙の投票率は、直近3年前の衆議院選挙の時で61.55%。全国平均は上回っていますが、高い数字を支えているのは中高年以上、高齢者層です。
過去10年間の国政選挙、知事選挙で29歳以下は一度も50%に達していません。
さらに毎熊教授は、補欠選挙という特殊な事情も投票率の低下に拍車をかける恐れがあるといいます。

島根大学法文学部・毎熊浩一教授
「(補欠選挙は)一般的に投票率が下がると言われていて、通常より15ポイントから20ポイント下がる事例もある。衆議院選挙は『政権選択選挙』と呼ばれ、通常だと、総代者を選ぶ選挙なんですね、今回別にそうではなくてあくまでも補欠の特定の地区の人を選ぶ選挙なので、どうしても盛り上がりには欠けると思います」

現職議員の辞職や死去により、欠員が出た場合に行われる補欠選挙。全国一斉の総選挙と異なり、欠員が出た地域だけで行うため、全国的に見ても投票率は低くなる傾向があります。
例えば、去年1年間に行われた4つの衆院補選。千葉5区では15ポイント以上低下するなど、補選の関心の低さを示すように全ての選挙区でその前の総選挙の時を下回っています。
島根1区の補欠選挙でも投票日7日前の時点で、期日前投票をしたのは有権者の6%余りで、単純比較は出来ませんが、前回3年前の総選挙と比べ、1ポイント以上低下しています。

島根大学法文学部・毎熊浩一教授
「若者が(選挙に)関心が低いから行かないというのもあるけど、関心を低くさせてしまっている原因も今の政治や大人にある。投票率が上がる、何なら通常の総選挙より上がることがインパクトが大きい。これは政治に緊張を与える(若者が)これだけ見ているんだと。そこが大事。だから若者にいっぱい行って欲しい」

毎熊教授は、政治に緊張感を与えるためには若者の投票行動が重要だと訴えます。
大物議員が次々と島根入りするなど、全国3つの補欠選挙のうち、唯一の与野党一騎打ちで注目を集める島根1区。その結果を左右しかねない投票率が大きな焦点となっています。

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