「これまでで一番強い」パリ五輪のメダルに自信 “自転車王国・静岡”からの挑戦 東京五輪レガシーいかし

東京五輪で自転車競技の会場になった静岡県は“自転車王国”を自認している。競技場など練習環境が整っている伊豆地方に多くの日本代表選手が生活していたり、実業団チームが練習の拠点を移したりしているからだ。パリ五輪の出場権をかけた国際大会でも“静岡県勢”が活躍し、メダルの期待が高まる。

日本代表の多くが“静岡県民”

自転車トラック競技の聖地・伊豆市。東京五輪でトラック競技の会場になった伊豆ベロドロームを含め世界基準の練習環境が整い、国内唯一となる日本代表の活動拠点だ。パリ五輪に向け、多くの代表選手が伊豆で生活しながら練習している。

ここで今、メダル獲得に向けて期待が高まっているのが「中距離勢」だ。

中距離は合計3種目あるが、最も多い4人で速さを競う「チームパシュート」で日本の出場枠を獲得できれば、パリ五輪では3種目全てに出場できる。このため男女とも代表組はこの種目に力を注いできた。

男女とも中距離チームパシュートに注目

チームパシュートで32年ぶりの出場を目指す男子代表は、全員が三島市を拠点とする「チームブリヂストンサイクリング」のメンバーだ。ブリヂストンサイクリングは伊豆市やロードレースの会場になった小山町に近いため、東京五輪を控えた2018年に活動拠点を三島市に移した。

パリ五輪のチームパシュートには、五輪経験者で経験豊富な窪木一茂 選手と橋本英也 選手に加え、成長著しい若手を含めた5人で挑む。

リオ五輪に出場した窪木一茂 選手はパリの出場権をかけた大会を前に「五輪には出場できる可能性がかなり出てきているので、あとはメダルを取れる位置まで上げることかな」と自信をうかがわせる。

また東京五輪に出場した橋本英也 選手は「(ブリヂストンの)チームメイトみんなで五輪の舞台を目指すことになりそうで、とてもワクワクしている」と大会を楽しみにしていた。

一方、チームパシュートで史上初の出場を狙う女子代表。チームのエースで東京五輪の銀メダリストの梶原悠未 選手は、伊豆市の隣の伊豆の国市に住んでいる。

梶原選手は「日本の女子のレベルが上がって強い選手や若い選手が入ってくれて、みんなで日本新記録を更新し続けながら初の五輪出場が見えてきた」と初出場に手ごたえを感じている様子だ。

「これまでで一番強い」男子はメダル目標

五輪に出場できるのはランキングの上位10チーム。2024年2月時点で男子は安全圏内の5位だが、女子は出場枠ぎりぎりの10位となっている。

男子はパリを見据えて現在地を知るため、そして女子は出場枠を獲得へ。共にテーマを持って迎えたのが、五輪選考を兼ね2024年3月に香港で開かれた国別対抗戦「ネーションズカップ」だ。

まず、男子代表はいきなり山場を迎える。予選1回戦で、相手はランキング1位の優勝候補・ニュージーランド。

スタートからスピードに乗った日本は中盤で一度は逆転されたが、後半に入ると再び巻き返し強豪国から金星をあげた。3分48秒127とこれまでのアジア記録を2秒以上も更新する好タイムを叩き出し、予選1位で決勝進出した。

その後 惜しくも決勝で敗れ銀メダルとなったが、パリでのメダル獲得を期待させる結果となった。

橋本英也 選手:
お互いに良い刺激をもらっていて、これまでの中で一番強い状態であると思っているので、チームメイトには感謝したいしパリ五輪がとても楽しみ

女子は悲願の五輪初出場

一方、出場枠を争う女子代表も予選を突破し決勝に進出。

メダル獲得をかけたオーストラリア(ランキング3位)との3位決定戦では逆転劇を見せる。序盤にリードを許し苦しい展開となるが、レースの折り返しとなる2キロ地点でスピードが落ちてきたオーストラリアをとらえて逆転に成功。そのままゴールし銅メダルを獲得した。

この結果、ランキングは出場権ギリギリの10位から6位に浮上。出場枠を大きく引き寄せた。

梶原悠未 選手:
しっかりチームワークを高めてコミュニケーションをとって、みんなで力を合わせてオリンピック出場枠獲得を目指していきます

2024年4月時点でチームパシュートは男女ともパリ五輪出場が確定した。

東京のリベンジに燃えるも…

ニッポン短距離勢でひと際パリへの思いを燃やすのが、チームブリヂストンサイクリングの太田りゆ 選手だ。これまでアジア選手権2連覇など成績を残してきたが、前回の東京五輪では控えに回り、夢舞台への出場は叶わなかった。だからこそリベンジに燃えるパリ五輪だが、これまで結果がともなわず苦しんでいた。

太田選手は「(パリ出場を)大事に思うあまり、緊張をうまく使えればとてもいいものになるのですけど、その時は恐怖というあまりよくない形になってしまった」と、前回の国別対抗戦の不振を振り返る。

そんな太田選手の気持ちを支えてくれたのは伊豆の自然だった。

太田選手は「南伊豆に車でドライブに行って河津桜がとてもきれいな時期で、菜の花もたくさん咲いていて。私は知らずに行ったのですけど、すごくきれいなものが見られて心がとてもリフレッシュされた」と話す。

「今できることはやれた」

その彼女にとってオリンピック選考の最後のレースとなったのが2024年3月の国別対抗戦だ。

チームブリヂストンサイクリングが活動拠点にしている三島市ではパブリックビューイングが開かれ、好タイムを願うファン約200人が熱戦を見守った。

挑んだのは日本でも馴染みのある「ケイリン」種目で、普段ガールズケイリンで腕を磨いてきた成果が期待された。短距離界は体格に勝る欧米の選手が有利といわれるが、粘りのレース展開で敗者復活戦を勝ち上がり9位に入り、地元ファンの期待に応えた。

三島市民は「選手がすごく頑張っていて、パブリックビューイングの応援が届いたのかな」「限界を超えている選手が素敵」「個人的には太田りゆ選手に(パリ五輪に)出てほしい」と“地元選手”の応援に熱が入る。

太田りゆ 選手:
「終わった」と思っています、ホッとしている。結果は最高に望んだものではなかったけど、今できることはやれた

太田選手が出場した「ケイリン」で日本は出場枠を獲得したが、誰が出場するかはまだ決まっていない(2024年4月時点)。

メダル獲得し“地元”でパレードを

この国別対抗戦ネーションズカップ香港で日本勢は好調だった。12種目中9種目で、計10個のメダルを獲得した。特に男子のスプリントとケイリン、女子のオムニアムとマディソンの4種目は金メダルだ。

窪木一茂 選手:
パリ五輪でメダルを獲得して三島市内でメダル獲得パレードが開かれるように僕たちがんばります。三島市の皆さんも静岡県の皆さんも、ぜひ応援よろしくお願いします

東京五輪から3年。“自転車王国・静岡”で力を磨いた選手たちは、“地元”にメダルを持ち帰るため遠く離れたパリに向かって走り続ける。

(テレビ静岡)

© FNNプライムオンライン