やたらと「遠回り」したがるタクシーにイライラ。料金かさ増しですよね?何かメリットはあるのでしょうか?

遠回りが合理的なルートなら問題ない

タクシーの走行では、やむをえず遠回りしなければならないケースがあります。例えば、本来の最短ルートが渋滞している場合です。

タクシードライバーは、基本的に目的地までの最短ルートを想定したうえで走行します。道路状況や時間帯を加味したうえでルートを選ぶため、いつもと違う道を使う場合もあるでしょう。

また、見知らぬ土地の場合、一方通行や車両進入禁止の標識があって地図では最短に見えるルートが使えない場合もあります。もし「この道で大丈夫? 」と不安に思った場合は、ドライバーに尋ねるとよいでしょう。

このような理由から、基本的にタクシードライバーが合理的と判断したルートを走行している場合には、料金のかさ増しとはいえないでしょう。

タクシーには旅客運送契約の義務がある

乗客がタクシーを利用した際、両者の間には商法第590条「旅客運送契約」が適用されます。これに基づいて、タクシードライバーは合理的なルートで乗客を送り届けなければなりません。

また、近年タクシー会社の車には、位置情報が分かるGPSやドライブレコーダーが搭載されています。そのため、タクシードライバーが故意に遠回りする事案は、発生しにくいと考えられます。

ただし、最短ルートの認識はドライバーの経験や知識に左右される点は否めません。例えば、新任ドライバーは経験が浅いため、必ずしも使うルートが最短とは限らないケースが挙げられます。

故意の遠回りは違法

万が一タクシードライバーが故意に遠回りしていた場合、旅客運送契約に違反したとして、本来の運賃から超過した分を請求できます。一度運賃を支払ってしまった後でも、タクシー会社へ請求することも可能だと考えられます。

また、利用者の伝えた目的地とまったく異なる場所に降ろされた場合、本来の目的地までの交通費を請求できる可能性があります。

ただし、利用者がタクシードライバーの遠回りを指摘するのは簡単ではありません。例えば、観光目的で来た慣れない土地だと、ルートの遠回りに気づくのは難しいでしょう。

そのため、地図上の距離と明らかにかけ離れた道を走行している場合は、目的地が合っているか確認したほうがよいかもしれません。

損害が出た場合の対処法

ビジネス目的でタクシーを利用した場合、トラブルによって会社へ損害が生じる可能性があります。しかし、責任の所在を問うには、状況の整理や損害とトラブルの関連性を示さなければなりません。

そこで、タクシーの遠回りや目的地の違いによって損害が出た場合の対処法について解説します。

遠回りにより遅刻が発生した場合

タクシーの遠回りにより仕事や電車に間に合わなかった場合、以下のような点が判断基準として挙げられます。

__・ドライバーが合理的な判断に基づいてルートを選択していたか
・ドライバーから迂回ルートについて説明があったか__

これらの情報において、ドライバー側の故意または過失が認められた場合、遅刻による損害を請求できる可能性があります。

一方的に返金の主張はできない

タクシーの運賃を巡るトラブルでは、タクシードライバー側またはタクシー会社と責任の所在を確かめたうえで、返金されます。遠回りしているからといって、一方的に返金をせまることは原則できません。ドライバーが故意に起こしたと証明された場合のみ、増額分の返金が行われます。

出典

法務省 商法(旅客運送関係)の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討⑴

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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