子どもの交際相手に母親「動物的カンがダメとささやく」→違和感はやっぱり正しかった話

親ならば子どもの結婚相手が気になるもの。家に挨拶にきて、下衆な言葉を言う息子の婚約者、食事に来たときにカップの扱いがおかしい娘の婚約者。母親のカンは「危ない」というのだが……

子どもの結婚相手がどんな人なのか、本当にうちの子を幸せにしてくれるのか。親なら誰もが気になるもの。相手に不信感を覚えたら、息子に言うべきかどうかも含めて悩んでいる母親たちは多いようだ。

息子の交際相手に違和感「動物的カンが……」

「半年ほど前、息子が結婚したい女性を連れて来ました。第一印象がよくなかったんですよ。私の動物的カンが黄色信号で(笑)。一応、そつなくもてなしましたが」 フミコさん(56歳)はそう言う。同い年の夫との間に27歳と25歳の息子がいるのだが、結婚すると言ってきたのは次男。相手は4歳年上だった。 「25歳での結婚が早いとか、相手が年上だからとか、そういう理由で黄色信号が点ったわけではありません。彼女、リビングに入ってすぐじろじろ見渡して、夫の好きな漆塗りの飾り皿を『うわ、高そう』と言ったんです。 普通は『素敵ですね』くらいのことを言うでしょう? いきなり高そうって、どういう人なんだろうと思いました」 世間話から、彼女の勤務先がわかった。それはフミコさんの勤務先とも縁がある会社で、友人としても親しくしている人がいる。

結果、母のカンは鋭かった

「相手を調査するのも嫌らしいと思ったんですが、友人に会って、さりげなく『うちの息子がお宅に勤めている女性と結婚するみたいなんだけど』と包み隠さず話してしまいました。 友人は『さりげなく評判を聞いてみようか』と言ってくれて。1週間もたたずに彼女から報告があり、『息子さんが好きならしかたがないけど、私だったらお勧めしないなあ』って。 お金に汚いという噂があるそうです。たとえば同じ部署の人が結婚するとき、みんなでお金を出し合ってお祝いをすると決まったのに、彼女はお金を払おうとしない。 割り勘で食事会があっても、彼女は出したフリをしたことがあるそうです。こちらは証拠がないので噂に過ぎないそうですが。『デート代をすべて出してくれない男はダメ』『男なんてATMみたいなものでしょ』と断言していたという話もありました」 フミコさんが息子にさりげなく確認すると、確かに息子はすべてデート代を出しているそう。「あなたの男気が素敵」と言われていることもわかった。そんな彼女に息子の心は弄ばれていると感じたが、彼女の職場での発言を息子に伝えるべきかどうかフミコさんは迷っている。 「息子がいいと思って選んだ女性なら、親が口を出すべきではないとも思いますし。夫には話しましたが、夫も『うーん』と言ったきり。どうしたらいいのか……」 もう一度、息子と彼女を招待してみようかと夫と話しているそうだ。

娘の婚約者は「DV予備軍では?」

「娘の婚約者、私はDV予備軍だと思っているんですが、娘は聞く耳を持たない。『彼がエリートだから、おかあさん嫉妬してるんでしょ』なんて言う始末。夫まで『いい男じゃないか、何を言ってるんだ』と私の目が狂っているって。でも、私は自分のカンを信じているんですよ」 サトエさん(58歳)はそう言う。29歳になるひとり娘がマッチングアプリで出会った男性と交際、結婚を決めたのだという。 付き合って半年ほどしかたっていないこと、相手の男性が8歳年上のエリートで有名企業の幹部候補だと聞いてサトエさんは不安を覚えた。 「それまで恋愛に興味がなかったから結婚が遅くなったと彼は言っていると娘から聞きました。まあ、ともかく会ってみましょうと自宅に呼んだんです」 挨拶はしっかりしていたし、はきはきと答える感じもよかった。気楽に食べて行ってねとサトエさんが夕食を用意すると、それもおいしいと食べてくれた。 「ただ、茗荷と卵のお吸い物を出したら、彼は茗荷を知らなかった。これ、おいしいけど何ですかって。まあ、親が嫌いだから出さないということもありますが、聞けば『うちの母親はほとんど料理しなかったから』と。 おかあさん、相当なキャリアウーマンでのちに起業したそうです。『母にしかできない仕事があったんだと思います。料理は誰でもできるけど』という言葉に私はちょっとカチンときましたが、彼は失礼なことを言っている気持ちはなかったみたい」

初対面の相手に上から目線な言動を連発

さらに、「でも彼女は専業主婦でもいいと思いますけど」と娘の将来に言及した。なんだか娘を下に見ているなと思ったものの、娘はムッとしてもいないようだ。 「先のことはどうなるかわからないから、臨機応変に柔軟に話し合って一緒に生きていくのがいちばんいいわねと穏やかに言ったら、彼の眉がビクッと動いた。対等に話し合う気なんてないなと私は直感しました。はきはきした口調も、オラオラ系に思えてきて……。 娘が何か言ったとき、彼がガチャッと音を立ててカップをテーブルに置いたんですよ。それが私には怖かった。でも娘はそんな彼を、リーダーシップがあって私を引っ張っていってくれるとメロメロなんですよね」 引っ張っていってくれる男は身勝手な男だよと言ったが、「私は優柔不断だからいいの」と流されてしまった。 「大反対とは言わないけど、もう少しだけ付き合ってから決めても遅くないと娘には言ってあります。彼の本性をよく見極めてほしい」 娘は友だちにも同じアドバイスをされたようで、あと半年くらいは付き合ってみると言いだした。その間にいろいろ気づいてほしいんですけどねとサトエさんは苦い表情で言った。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。 (文:亀山 早苗(フリーライター))

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