子ども時代の憧れを仕事に 2つのルーツが彩るステンドグラス 秋田市

幻想的な美しさを放つステンドグラス。色とりどりのガラスに自分のルーツを織り交ぜて作品を作る、秋田市の女性を取材した。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さんは、秋田市御所野の自宅に工房を構え、日々作品作りに取り組んでいる。

工房には、色や質感が様々な数百枚のガラスが取りそろえられ、その中から自分が感じたインスピレーションを大切に作品のイメージを膨らませる。

「春の新緑のイメージで作ろうと思っている」と制作中のミニランプには緑色のガラスを選んだ。

ステンドグラス作りは、ガラスの厚さや角度がずれないように細心の注意が必要。ガラスを均等に切り、機械で研磨してバランスを整えると、はんだ付けがしやすいようにガラスの断面にテープを張っていく。緻密な作業の連続だが、菊地さんにとってステンドグラスは癒やしの存在だ。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さん:
「光の具合とか、天気でも表情が違ってくる。ライトでも太陽でも当たった時に、床や壁に映る光がとてもきれいなので、そこも魅力の一つ」

菊地さんの作品には、ピンクや青色が多く使われていて、優しい雰囲気も特徴だ。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さん:
「いろいろな色をたくさん作品の中に詰め込んでしまうと、色がけんかしてしまってあまり見栄えがよくないので、クリアなガラスを入れたり、薄い色を入れたりして、抜け感を出すようにしている」

羽後町で生まれ育った菊地さんがステンドグラスに初めて出会ったのは、母親の故郷・長崎だった。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さん:
「小さい頃に長崎の文化に触れることが多くて、ステンドグラスやガラス細工がすごく好きで、家を建てることがあったらステンドグラスをはめ込みたいなとずっと思っていた」

菊地さんの自宅には、至る所にステンドグラスが散りばめられている。爽やかな色合いの長崎の教会をイメージしたもの。長崎の庭園で見たハート形の石をモチーフにしたものなど、菊地さんのルーツを感じることができる。

そんな菊池さんがステンドグラスを作り始めたのは8年前。結婚し、新しく建てる家に飾ろうとステンドグラスを探していた頃、あるガラス工房との出会いがきっかけだった。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さん:
「せっかくだからステンドグラスを作ってみたらとアドバイスをもらい、作ったのがきっかけだった」

やがて工房の教室に通うようになり、2018年に仕事を辞め、本格的にステンドグラスの修業を始めた。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さん:
「ガラスのカットの力加減や、何ミリそろえなければいけないとか、大変だったけれどもずっと楽しい思いで作っていた」

3年後、ステンドグラス作家として活動を始め、秋田をモチーフにした作品に力を入れてきた。

「西馬音内の盆踊」を題材にした作品は、かがり火を表すオレンジ、夜空を表す深い青色、そして輝く月の光が差す中で、妖艶に舞う踊り子の姿が印象的だ。衣装の部分には、ガラスだけではなく本物の端縫い(はぬい)衣装の素材が取り入れられていて、羽後町で育った菊地さんのこだわりが見える。

また、今にも飛び出してきそうな大迫力の「なまはげ」の作品も。風になびく髪や雄たけびが聞こえてきそうな険しい表情、あふれ出る躍動感が表現されている。

現在制作中の立体的な秋田犬のステンドグラスは、他の作品を作った際に余ったガラスも活用していて、SDGsを意識している。いつか展示会で完成版を見られる日が来るかもしれない。

最近は、ビジネス仲間からアドバイスをもらい、ステンドグラスと仏壇のコラボレーションに挑戦。仏具屋と協力して、狭いスペースにインテリアとしても置くことができる新しい仏壇が誕生した。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さん:
「故人の思いや仏壇を必要としている人たちの心の支えになるようなもの、優しい感じに作っている」

子どもの頃に抱いたステンドグラスへの思いを失うことなく、菊池さんは秋田の工房で新たな作品作りに挑戦し続けている。

ステンドグラス作家・菊地真梨奈さん:
「小さい頃に思っていたことを仕事にすることの素晴らしさを、すごく感じている。秋田の作品がなかなか作れていなかったので、今後増やしていきたいと思っている」

© 秋田テレビ