中世ヨーロッパを舞台にした本格ストラテジー「Manor Lords」のアーリーアクセス版をレビュー!開拓から整備、内政に外交をこなして領土を発展

2024年4月26日よりアーリーアクセス版の配信を予定しているPC向けストラテジーゲーム「Manor Lords」。ひと足早く本作に触れる機会を得たので、そのレビューをお届けしよう。

■四季の影響を受ける広大なフィールドで、領土の拡大から運営・周辺との外交までを行う

本作では、プレイヤーは領主となって民を指揮し、自分の領土を拡大・発展させていく。アーリーアクセス版では、“繁栄の始まり”、“平和の修復”、“一触即発”という3つのシナリオが用意されていた。

シナリオにはクリア目標をはじめとするさまざまな条件が用意されており、初期設定ではシナリオごとに一部の設定こそ異なるものの、そこも含めてプレイヤー側が自由にカスタマイズできる。

クリア目標には、無限に遊ぶ“なし”、プレイヤーの拠点である居留地の規模を「大きな町」まで上げる“成長”、ほかの領主の領地をすべて制圧する“支配”、用意された地域をすべて支配するのが目的の“征服”があった。

ほかにも、天候に応じて起こるイベントが与える影響の度合いや略奪者の出現頻度など、細かなところも自由にいじれるため、自分の腕前に合わせた調整もできそうだ。

本作でとくに印象的なのはリアリティだ。舞台となる地域は場所によって作物の適性が違ったり、井戸を掘るために必要な地下水が流れるところが存在したりする。さらに、動物の群れがいる森を余計に伐採してしまうと、貴重な食糧源にもなる彼らが逃げてしまったり、冬に入ると薪の消費量が2倍になったりする。

また、劣悪な環境が続くと住人の命に関わる。食料が偏ると病気になるし、なくなれば飢え死に、薪が足りなければ冬に凍死する。資源の貯蓄と分配と居留地の発展を並行して進める必要があるため、序盤からなかなかの難題を押し付けられる。

難易度設定にもよるが、各地域には略奪者が出現することもあり、連中を追い払うためには男手を集めて民兵隊を組織しなくてはならない。素手で戦わせるわけにもいかないので、剣や槍、盾といった武器は必須だ。その武器は、当然だが自分で作る。

戦闘では、兵士の装備やそのときの天候などが大きく影響する。こちらに有利な状況を生み出せば、ほとんど死傷者を出さずに圧勝することも可能だ。住人が死ぬリスクを避けるなら傭兵を雇うのも手。だがお金がかかるため、おいそれと利用できるわけでもない。

さらにアーリーアクセス版では深く触れられなかったが、特定の地域に存在する領主とは手紙のやり取りなどもあり、要は領主同士による外交も行われる。詳細はわからなかったが、交流次第で同盟・敵対関係などに分岐するのかもしれない。

拠点の開発や部隊同士の戦闘など、本作はそれぞれのボリュームが非常に多い。都市開発や戦争といった、いずれかの要素に焦点を当てたストラテジーも多いが、本作はそうした各コンテンツを簡略せずにそのまま詰め込んだと言ってもいいくらいの濃さだ。

考えることの多いシビアさの代わりに、舞台となる中世ヨーロッパを生きていることの実感をとことん味わえるような作風になっていると感じた。

■いつの間にかリアルな町ができあがる不思議

リアリティを重視した作風であるがために、拠点の開発や運営、周辺との外交など、本作は考えることがとにかく多い。しかし、現実的で理詰めのスタイルで攻略していくと、1周目でもそれなりに適応できる。

作物が育ちやすい場所には農業区を作り、畑と住民を配置する。毎年栽培すると土地が枯れてしまうので、途中で休耕する年を交える。鉄が採れるところがあれば、採掘のための施設と人を用意する。資源を集めて備蓄するための倉庫は、各地区からの運びやすさを踏まえて中心部に作り、人が集まる部分に市場を作る。

市場の品ぞろえが増えたり教会など憩いの場があると住人たちは満足し、プレイヤーへの支持率とも言える“資格”が増えていくので、娯楽や公共施設への投資も欠かせない。

そうした作中の要素に応じて町を開発していくと、気づけばリアルな町ができている。土地の特徴に応じて小さな拠点があり、それぞれをつなぐ道の先には中心地があり、市場や酒場、教会が軒を連ね、多くの人が毎日行き交う。

筆者自身、経営や地理を専門的に学んだわけではないのだが、試行錯誤の末にしっかりとした町ができあがるのは、リアリティを追及した本作のおかげだと感じる。

町が発展してくると、住居ごとに養鶏や菜園をさせ、増えた資源を専用の施設で加工、加工された製品を交易所から周辺に輸出して、お金を定期的に手に入れるというサイクルができあがり、経済的に安定してくる。伐採してなくなった森林は、木を植えるための施設を使い、植林と伐採をくり返せばいいので、個人的にはあまり問題にはならなかった。

とはいえ、鉱物系の資源には限りがある。狩れる動物は絶滅させないよう個体数を維持すればいいし、木の実などの植物は冬が明ければ勝手に増えてくれる。だが採掘するタイプの資源は有限で、尽きればそれまでだ。

そうなると、今度は領土の拡大が視野に入ってくる。ほかの地域にも資源がたっぷり眠っているので、それらを活用すれば領内の経済もしばらくは維持できるわけだ。

居住地レベルを上げたり、邸宅を作って住民から税金を徴収したりすると「影響力」が増え、これが1000まで溜まると周辺の地域をひとつ占領できるようになる。影響力は上記のような条件を達成すると少しずつ溜まっていくので、とくに税金の徴収は早めにしておきたい。

領内の発展から資源の不足、周辺への領土拡大という流れがとても自然で、個人的にはここまでがひとつのチュートリアルになっていると感じた。ストラテジー系が苦手な人でも、この段階までひと通り進めれば、拠点の拡大・維持に必要なノウハウはだいだい掴めるだろう。

そして個人的にうれしかったのが、自分の領土を領主の三人称視点で動き回れることだ。各地を開発している間は基本的に俯瞰視点で作業をするため、ひとつひとつの住居や施設は豆粒程度の大きさでしかないが、三人称視点なら住民と同じ視点で周囲を見られるわけで、それまで模型のように見ていた町並みがとたんに身近でリアルな存在になる。

広大な畑のある穀倉地帯や、その近くに並ぶ風車、教会や酒場が集まる中心街など、自分が今まで手掛けてきた場所を三人称視点で巡っていると、それまでの苦労がしっかり反映されていることがわかって感慨深くなる。リアルな中世ヨーロッパの町を再現できることもあり、ただ散策するだけでも楽しい。

今回触れたのはあくまでもアーリーアクセス版だったので、すべてを確認できたわけではない。しかし、土地ごとの作物の相性や地下水の位置と井戸の関係、交易に使う品目の細かな選定など、本作はリアリティを追及した要素が詰め込まれていた。

また、各シナリオでは敵が出現する頻度をはじめとする各種設定をカスタマイズでき、初心者でも遊びやすい。ストラテジー系に興味がある人も、すっかり慣れた上級者にもオススメできる一作だ。

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