与野党で対照的、大票田・松江の戦い方 衆院補選 島根1区

 衆院3補選のうち唯一の与野党対決となった衆院補選島根1区で、与野党が有権者の62%を占める大票田・松江市で対照的な戦いを展開している。「政治とカネ」の問題が最大の争点になる中、自民党の新人が周辺部を軸に支持固めを図るのに対し、立憲民主党元職は中心部での無党派層の取り込みに比重を置いている。

 告示日2日目の17日、自民新人の錦織功政候補(55)の姿は松江市中心部から約25キロ離れた美保関町のJFしまね美保関支所前にあった。応援に駆けつけた小渕優子選挙対策委員長とともに「ふるさとのために戻ってきた」と強調。同町の6カ所で街頭に立ち、午後からは島根、鹿島両町にも足を延ばした。

 自民派閥の政治資金パーティー裏金事件による逆風を踏まえ、支持者の多い周辺部での支持固めを優先する。告示日以降、松江市内で少なくとも43カ所(24日時点)で街頭に立ち、このうち29カ所(67.4%)が旧八束郡8町村を占める。島根町大芦地区で17日に街頭演説を聞いた80代の男性支持者は「ここはずっと自民でやっている。今回もやはり自民だ」と話した。

 一方、選挙人名簿登録者数の72%(11万8008人)は旧松江市に集中。相手候補の背中を追う展開が続く中、1区選挙対策本部の嘉本祐一事務本部長は「周辺部の支持固めだけでは十分でない」と強調。21日は小泉進次郎元環境相が松江テルサ前を含む中心部2カ所で街頭演説を行ったほか、広報車の中心部での遊説や交流サイト(SNS)による情報発信にも力を入れる構えだ。

 対する立民元職の亀井亜紀子候補(58)は24日までの少なくとも53カ所の松江市内での演説のうち、36カ所(67.9%)が旧松江市で実施。浮動票の獲得も狙い、人が集まる商業施設前などで「周りの人を誘って投票に行ってほしい」と呼びかける。

 2021年衆院選で全体の得票率41.3%に対し、松江市は43.1%と選挙区内9市町村で最も善戦した。今回は応援で続々選挙区入りする立民の党幹部や国会議員を旧松江市に投入し、裏金事件を批判する。20日に商業施設前など4カ所でマイクを握った蓮舫参院議員は「今、このまま期日前投票に行ってほしい」と述べ、演説を聞いた直後の心象の変化がないうちに投票するよう促した。

 支持母体の連合島根の組合員に加え、自主支援に回る共産党支持層を含めて基礎票は3万票ほど。補選は総選挙に比べて投票率が下がる傾向にある点を踏まえ、陣営は勝利には旧松江市での浮動票による上積みが欠かせないとみる。

 終盤戦は昼間人口の多い旧松江市での投票呼びかけを継続する構えで、総合選対委員会の川井弘光事務局長は「自民票が固まっていない人口密集地を中心に働きかける」と力を込めた。

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