「観光都市(?)奈良のこれからを考える」 ⑪~観光地と観光名所

今回は「観光地」と「観光名所」という同じようで同じでない言葉。その違いを、奈良を題材にして、自分なりにお話ししたいと思います。

早速、二つの言葉について調べてみました。

「観光名所」とは・・・?

吉野の如意輪寺・後醍醐天皇陵

風景の美しい場所や歴史的な価値のある場所、娯楽のための施設や文化財など。

わざわざ遠くまで足を運んででも観る価値のある場所のことを言うらしい・・・。

「観光地」とは・・・?

吉野山の桜

観光旅行と呼ばれる保養、遊覧を目的とした旅行または旅行者に対して、歴史、文化、自然景観などの遊覧資産が適宜整備されていること。

交通機関や宿泊施設などで観光客の受け入れを行える地域のことを言うらしい・・・。

ということがわかりました。

富雄丸山古墳・木棺全景## 奈良は・・・?

これを、たびたび比較対象にしている奈良と京都に当てはめてみましょう。すると、「奈良は観光名所」で、「京都は観光地」だと言えるかもしれません。

私が言うのもなんですが、奈良は交通機関と宿泊施設などでは観光目的の来県者の受入れができているとは決して言えないからです。

鉄道やバスは、あくまで生活者の利便優先のダイヤ編成です。また、宿泊施設については、わずか10,000室程度の客室数です。(第③回でも情報提供しましたが、この数は、京都の約1/5、47都道府県中44位くらいです)

歴史上の大発見、富雄丸山古墳・蛇行剣

そのため、観光地と呼ぶには、あまりにも平均滞在時間も短く消費額も小さなものです。

しかし、世界遺産やメジャーな社寺仏閣に加え、「富雄丸山古墳」や「平城京から発見された木簡」などの話題が豊富です。今や、奈良は令和の時代に次々と新たな発見が出てきています。このこと自体、とてつもないポテンシャルを感じさせてくれるものです。

行きたくなる仕掛けづくり

世界遺産登録が期待される藤原京跡

歴史好きの方だけでなく、普通のお客さまにも、奈良に行きたくなる仕掛けを地域一体となって作っていくということが喫緊の課題だと感じています。

そして、そうした仕掛けづくりと合わせて、交通の利便を高める手段を講じること。これができてはじめて、奈良という本のページを読み進めていけるのではないかと考えます。

まさに、歴史に感銘を受けつつ、現代人に受け入れられやすい環境を整えること。それがポイントとなるのでは?と考えます。

猿沢池と興福寺五重塔

観光名所から観光地になっていくことで、私自身の中での「観光都市(?)」の(?)が外れてくれることを願い、次回、最終回に向かって進めていきたいと思います。

(つづく)

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 志茂敦史(しも・あつし) 奈良交通㈱ 東京支社長

© 株式会社ツーリンクス