【U23日本代表、カタールとの大一番を前にした精神力と団結力を探る(1)】A代表を参考に敢行した選手ミーティング。山本理仁「こういうこと思ってるんだって知れた有意義な時間」

カタール戦を翌日に控え、4月24日にドーハ市内で練習するUー23サッカー日本代表 撮影:中地拓也

人生で一番緊張する試合――ドーハ市内でトレーニングに励む日本代表の選手の口から、こういう言葉が漏れてくるのも無理はない。日本時間の4月25日23時にキックオフする試合は、それほどの重みを持つ。

パリ五輪最終予選を兼ねたU―23アジアカップの準々決勝。大岩ジャパンはカタールと対戦する。勝てばパリ五輪の出場に大きく近づくが、負ければフランスに向かう切符は手に入らない。ここまで青いユニフォームが紡いできたオリンピックの連続出場回数は「7」。それを途絶えさせるか、それとも「8」へと伸ばすのか。プレッシャーにならないわけがない。

しかも、グループステージの第3戦では手痛い敗戦も喫した。土をつけたのは韓国代表だ。日本にとって負けられない相手に味わった悔しさが、プレッシャーをより高める。

その試合後、藤田譲瑠チマが口にしたのは「自分が中心になってまとめあげたい」という言葉だった。そしてそれを、実際に行動に移した。24日の夕食後に、選手だけのミーティングを行ったという。発案者は藤田譲瑠チマで、そこに、副キャプテンらも賛同して選手を集めた。

「A代表に帯同しているスタッフもいるんで、そういった方から、A代表は試合前にチームミーティングを選手だけでやったりすることを聞いて、僕らも韓国に負けた後だったからこそ今やるべきだなっていうふうに思った」

藤田と並んでチームの精神的支柱の一人である山本理仁はそう説明する。

■「こういうこと思ってるんだって知れた有意義な時間」

そのミーティングが果たした役割は大きかった。山本はその内容について、「言えることと言えないことがあって……」と話すほどで、それほど腹を割った内容を話したのかと聞いてみると、「そうですね」と首肯し、次のように明かす。

「なかなかそういう機会も今までなかったですし、僕も言うのは恥ずかしいタイプなんで、なかなか言えないですけど、ああいった場が改めて開かれて、(小久保玲央)ブライアンもそうですけど(佐藤)恵允だったり、こういうこと思ってるんだって知れたのですごい有意義な時間だった」

その佐藤は、「自分は今までちょっとふがいないプレーをしていたのでそれについての話と、カタール戦でノックアウトステージが始まるということで本当に自信を持ってプレーしようって言いました」と振り返る。グループステージを終えた時点で、「ちょっと落ち込んでいた」と赤裸々に自身の精神面を明かすが、そこで話したこと、そして、チームメイトに受け入れてもらえたことで「元気をもらえた」という。

このチームでは、こうした選手ミーティングは今まで行ったことがないという。それを覆して集まったことは、23人全員が勝利を目指しているからだ。何をすべきか、ピッチ外でもできることのために動かないわけにはいかなかった。

「この中はファミリーだぞっていうのと、チームは全員が一人ひとりを信頼している」
山本がこう訴えたというミーティングの団結力を見せる場が、間もなくやってくる。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)

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