ＮＴＴ西日本と竹中工務店は建築プロジェクトの設計段階で竣工後の無線環境を高精度に検証し、建物内の通信環境を効率的に構築できる共同試行に成功した。ＮＴＴが開発した無線電波伝搬シミュレーション技術「Ｃｒａｄｉｏ（クレイディオ）」と竹中工務店が持つＢＩＭデータを活用。従来はクレイディオで無線環境を想定する場合、竣工後に建物内で３Ｄ形状を直接計測する必要があった。ＢＩＭデータによって現地での計測作業を省略し、より簡易かつ正確に室内の無線環境を推定できるようになった。
２４日に発表した。両社によると、建築物のデザイン多様化や超高層ビルの拡大が進み、無線通信で電波の遮蔽（しゃへい）や干渉などが発生しやすくなっている。特に複合ビルなどの大規模建築物では安定した室内の通信環境を確保・整備することが不可欠になっているという。
両社は２０２３年１２月７日～２４年３月２９日に大阪市北区にある実証施設「コモングラウンド・リビングラボ」のフロア２室（床面積約２３５平方メートル）を活用し、クレイディオとＢＩＭデータを組み合わせた試行を実施。より簡易かつ正確に室内の無線環境を推定できるか評価した。
建物設計段階で電波伝搬推定結果を可視化。従来１３０時間かかっていた無線基地局設置位置の設計や確認の時間は９０分に短縮できることが判明した。無線基地局数は従来の半数程度で十分な通信環境を確保でき、受信電力の推定値と実測値の誤差も一般的な基準値未満だった。
２４年度はＮＴＴ西日本の所管エリアを対象により大きな建築プロジェクトで検証。２５年度以降の実用化を目指す。竹中工務店は高付加価値サービスとしての展開を想定している。
