石見式醸造法の全てを解き明かしたビジネス系ビール本出版!家庭用冷凍庫とポリ袋でビール造り

書籍、『石見式スモールビジネス論: 島根発クラフトビールでスモールビジネスを成功させた男の哲学』が今井出版から刊行された。
これは、初期投資を抑えて安価にブルワリーが設立できるため島根発で瞬く間に全国各地に広がった、いわゆる「石見式醸造法」の全てをまとめた一冊。

著者は石見式醸造法の開発者で島根県江津市にある石見麦酒工場長の山口厳雄氏と、オンラインコミュニティ「山陰ビール友の会」を主宰する矢野竜広氏の二人だ。
矢野氏は、ビアジャーナリストを養成する講座「ビアジャーナリストアカデミー」の卒業生で、現在は鳥取県に移住しビアエッセイストとして活躍中だ。

石見麦酒工場長の山口厳雄氏(左)と、ビアエッセイストの矢野竜広氏(右)

小規模醸造の常識を変革した石見式醸造法

本書は山口氏がなぜ石見式醸造法を生み出すに至ったかの軌跡、ビジネスの根本となる考え方、石見式醸造法の導入方法 の3章で構成されている。

ブルワリー設立にかかる費用とスケジュールを明確に示していたり、醸造所の1日の流れや経営者の過ごし方を紹介したり、具体的で即役立つ知識も豊富に記されている。
石見式醸造法の導入を検討している人にとってはまさに必読の書と言えるだろう。

石見式の1回の仕込みは100リットル。規模が小さいからこそ仕込みの経験を積むことができ醸造家のスキルアップにつながる

地域に寄り添った醸造から生まれた石見式スモールビジネス論

石見式というと、「ステンレスタンクの代わりの格安フリーザーとポリ袋で節約のビール造り」というイメージが先行しているように感じる。
しかし節約ありきではなく、街の小さな商店や農家のニーズに合わせた“多品種少量生産”でビールを生み出すための手法として石見式は誕生している。

代用できるものは代用する、無いものは自分でつくる、業界の垣根を越えて課題を解決する、様々なアイデアを重ねることによって結果的に低コストでのビール造りを実現させているのだ。

本書には「一つの視点に固執しない」「悩みこそビジネスの種」「自分は詳しくなくてもいい。信頼できる専門家と解決する」など、山口氏のビジネスの掟が示されている。
経営者をされている方には一般的な教訓なのかもしれないが、実践は難しいことだろう。
本書では山口氏が行ってきたそれらが具体的に著されており、読み物として面白くもあり、また学ぶことも多い。

クラフトビール業界に新規参入したい方はもちろん、少量生産でビジネスを始めたい方、地方創生に興味のある方にもヒントとなるだろう。

醸造所の開業を目指す人だけでなく、ビジネス書としても、気楽な読書としても手に取りたい一冊

著者・矢野竜広氏からのメッセージ
「ビール関連の本は今やたくさんありますが、ビジネス論に軸足を置いたものはこれまであまりなかったのではと思います。しかも舞台は島根県西部と過疎の本拠地のようなところです。家庭用冷凍庫にポリ袋という、いわゆる石見式醸造法の考え方や目指すものを知ることで、節約だけではない様々な導入メリットに気付いてもらえたら嬉しいです」

インフォメーション

『石見式スモールビジネス論: 島根発クラフトビールでスモールビジネスを成功させた男の哲学』
●著者:山口厳雄、矢野竜広
●出版社:今井出版
●発売日:2024‏年3月15日
●ページ:193ページ
●寸法:12.7 x 1.2 x 18.8 cm
鳥取および島根県内の今井書店を始め、今井出版オンラインストア、Amazonおよび楽天で販売中

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