「お久しぶりです」
筆者がU―23サッカー日本代表の練習取材に初めて訪れた4月18日、暑さが厳しいトレーニング場の横の、日差しを遮って影になった部分に設けられたミックスゾーンでの高井幸大の第一声だ。身長差は30cm。見上げながら聞くその言葉は、麻生グラウンドで話を聞いているよりも高い場所から落ちてくる感覚だった。
この時点で、大岩ジャパンは中国代表を1-0で破っていた。退場者が出たことで一人少ない時間帯の方が長い試合で、高井が最終ラインの軸として相手の攻撃をはね返し続けた。そうしてアジアの舞台で掴む成長が、高井をさらに高く感じさせたのか。
筆者がカタールに飛ぶ直前の麻生で、さまざまな人から“高井によろしく”“頑張ってと伝えて”という言葉を授かっていた。そういう風に期待されていることについて聞くと、「その光栄さをかみしめながらやっていきたい」と笑顔を見せた。そして、その言葉の通りのプレーを大岩ジャパンの最終ラインで見せ続けている。
「快適に過ごせています」
カタールでの活動についてゆっくりと話す高井のテンポとは裏腹の成長を、アジアのピッチで披露している。
■「明日、それを証明できればいい」
その高井が、このチームの大一番の試合に出場する可能性が濃厚だ。日本時間の4月25日23時にキックオフするパリ五輪の最終予選を兼ねたU―23アジアカップの準々決勝。負ければ終わりというプレッシャーのかかる試合で、CBとして先発メンバーに名を連ねそうだ。
「強い相手だと思うので、臆せず戦いたい」
いつも通りの話し方ではあるが、発する言葉はいつもより強い。
「前線にもいい選手がたくさんいますし、組織的で良いチームだと思ってます」
カタールについてこう警戒するが、ここまで2試合に出場して得た手応えもある。それについて聞けば、「もっともっとできると思うし、明日、それを証明できればいい」と力強く答える。
気持ちが入っていることが伝わってきただけに、さすがに堅くなる部分もあるかと思われたが、「あんまり緊張しないんで、楽しめればいい」といつもの姿勢を崩さない。
重要な試合を楽しむ気持ちと、ピッチの上で証明したいもの。高井はそれを両立させようとしている。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)