【カタールとの大一番に挑むU23日本代表で、川崎・高井幸大が証明するもの(2)】大岩ジャパンのチームメイトも感じる頼もしさ……近くで見守ってきた安藤駿介と登里享平も期待の言葉

韓国代表戦でプレーするUー23サッカー日本代表の高井幸大 撮影:中地拓也

パリ五輪の最終予選を兼ねたU―23アジアカップを戦う日本代表は、グループステージの3試合を2勝1敗で終えた。その唯一の黒星を喫した韓国戦では、大岩ジャパンの選手全員が歯がゆい思いと悔しい思いをした。

この試合をベンチから見ていた関根大輝は、特に前半の戦い方を悔やんだ。というのも、後半、選手が改めて積極的に行った結果、韓国の選手がボール保持を諦める場面があったからだ。

「簡単に蹴ってくれる場面とかもありましたし、それを受けて後ろで(高井)幸大が競り勝てていたので、そういう戦いも前半からできていればもっとチャンスを作れた」

関根は、今大会、鮮烈な存在感を放っている右SBだ。中国戦ではわずかではあったものの、CBにも入っている。冨安健洋とベン・ホワイトを参考にしていると話すこのユーティリティな柏レイソルのDFから見ても、高井幸大の高さと守備力は武器になるという。中国戦と韓国戦ではね返し続けた結果が、チームメイトからも感じる頼もしさにつながっている。

■マリ戦をきっかけとして

今年3月、高井はクラブハウスの入り口で取材に応じた際に「不安定なところがある」と自身の課題について語っていた。試合によってパフォーマンスに波があることを自覚しており、それをなくすことが必要である、と。

そんな中で、パリ五輪の最終予選を前に召集されたラストチャンス。高井は、京都府亀岡市のスタジアムで評価を高めた。チームとしてはU―23マリ代表に敗れたものの、個人としては充分以上に渡り合った。

その試合を境に、チームに戻っても好パフォーマンスを見せた。鬼木達監督も多摩川クラシコをはじめとして、神奈川ダービー、そして町田ゼルビア戦と3試合連続で先発メンバーとして送り出したが、周囲の期待に応えるように、そして、波をなくすという自身の課題を振り払うかのようなプレーを見せている。

パリ五輪最終予選のメンバーに選ばれた直後、3月の代表活動期間で何か掴んだものがあったのか聞いてみたが、「うーん……」と考えたうえで、「それをきっかけにではないですけど、良いプレーができている」と答えるにとどまっていた。ドーハでその質問を改めてしてみたが、「特に思うところはないですけれども、積み重ねかなと思います」と話すのみだ。こう答えるのは、今の成長ではまだ満足できないという気持ちが高井の中にあるからかもしれない。

■安藤駿介と登里享平の期待

高井を近くで見ている選手にとっても、期待は大きい。

2012年にロンドン五輪のメンバーに選ばれた川崎フロンターレGK安藤駿介は、中国戦当日の4月17日に期待の言葉を次のように発している。

「高井はもっと上を見ているでしょ。A代表を見据えているだろうし、それだって通過点ってしか思っていないかもしれない」

背番号2の先輩である登里享平も、同じ思いだ。4月13日のセレッソ大阪と川崎フロンターレが対戦後、高井についての質問をすると「将来がすごく楽しみな選手で、日本代表としても活躍する姿を見たいですし、フロンターレでいろいろと経験して代表などでどんどん飛び出していってほしい」と賛辞とエールを惜しまない。

今回のアジアの舞台で得た経験と成長によってどれほど大きくなって等々力に帰ってくるのか。開催国との大一番で、その一端を証明してみせる。

(取材・文/中地拓也)

© 株式会社双葉社