【社説】グーグルの処分 市場寡占の弊害取り除け

巨大IT企業による市場の独占、寡占の弊害は取り除かなければならない。欧米に倣い、日本も市場の監視機能を強める必要がある。

公正取引委員会は米グーグルがLINEヤフーの広告配信事業を制限したとして、初の行政処分を科した。

問題があったのは、利用者がインターネットで検索した内容に関連した広告を表示する検索連動型広告である。

公取委によると、グーグルはヤフーとの契約内容を変更して、検索エンジンと検索連動型広告の技術提供を制限した。グーグルの技術に頼っていたヤフーは、ポータルサイトなどに検索連動型広告を配信できなくなった。

この事業で両社は競合していた。グーグルが市場をほぼ独占し、広告主やポータルサイト運営者、消費者に不利益が及んだ可能性がある。

こうした行為は、独占禁止法が禁じる私的独占や競争者に対する取引妨害の疑いがある。公取委は2022年から調査していた。

公取委の動きを受け、グーグルは技術提供の制限を中止したが、独禁法違反が疑われる状態は7年以上も続いた。ヤフーに対する優位な立場を悪用したと言える。

今回の行政処分は独禁法の確約手続きが適用され、グーグルは改善計画を公取委に提出し、認定を受けた。

改善計画にはヤフーへの技術提供を3年間制限しないことや、外部専門家による定期監査の結果を公取委に報告することが書かれている。グーグルが履行しなかった場合、公取委は認定を取り消して調査を再開する。

確約手続きは競争を阻害する行為を速やかに排除することを重視し、排除措置命令や課徴金納付命令といった重い処分は科さない。

グーグルは「独禁法に違反したとは認定されていない」とコメントを発表したが、行政処分の事実をもっと重く受け止めるべきだ。

グーグルは10年に、日本での検索・ネット広告事業でヤフーと提携した。

日米のネット業界のトップ同士が手を組むことへの懸念は当時からあり、楽天や米マイクロソフトは「公正な競争が阻害される」と主張した。公取委はグーグルとヤフーが競争関係を維持すると説明したため、問題はないと判断した経緯がある。

その後、グーグルが技術提供を制限したことは公取委に伝えられず、独禁法違反が疑われる状態に長く気付かなかったという。この間の対応は厳しく検証すべきだ。

公取委は市場規模が拡大するデジタル分野への対策を強化している。巨大ITに対抗するには専門人材の確保や法令の整備が必要だ。

巨大ITの規制を強化する法案が今国会に提出される。罰則の強化は世界の潮流である。欧米各国とも協力し、巨大ITの行き過ぎた行為を正してもらいたい。

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