お土産少ない島根の離島、移住の大学生奮闘 岩ガキの缶詰2種類を開発、商品展開へ

開発中の岩ガキの缶詰、しょうゆ味のうま煮(右)と塩レモン味のオイル漬け

 土産物の少なさが長年の課題となっている島根県の離島・西ノ島。ここに1年移住した東京の大学生西野春華さん(22)が新商品の展開に挑んでいる。地元企業と開発を進めているのは岩ガキの缶詰。「せっかく島に来たなら、この土地のお土産を手に取ってほしい」。島の岩ガキの魅力を引き出し、商品として世に出す喜びを感じている。(共同通信=上野すだち)

 隠岐諸島の西ノ島は日本で初めて岩ガキ養殖を成功させた地とされ、他の海産物も豊富だ。それなのに土産店は隣の島やフェリーで2時間以上の松江市などの商品が目立つ状態。新たな土産物づくりは島の願いだった。

 一方、明治学院大でマーケティングを学んだ西野さんは「実際に商品を作り、販売するまでを体験したい」と感じていた。

 挑戦の場を探すうちに知ったのが「大人の島留学」。隠岐3町村が全国の若者に働く機会を提供する制度で、西ノ島町は地元の水産加工会社とともに土産物になる商品の開発をする人を募集していた。

 「ここだ」と感じて休学し2023年4月に移住。町の産業振興課に所属し開発に乗り出した。

 着目したのは特産の岩ガキ。サザエ缶を製造していた会社の技術を利用し缶詰にすることになり、味のコンセプトなどは基本的に任された。苦労したのは熱の入れ方。プリッとした食感を残すため熱殺菌の時間や温度を何度も試行錯誤した。

 作り上げたのは、しょうゆ味のうま煮と、塩レモン味のオイル漬けの2種類で、サラダなどにもアレンジできる和洋の味付け。パッケージには地元出身のデザイナーに描いてもらった島の風景をあしらった。

 クラウドファンディングで資金を寄せてくれた人に試食してもらい、アンケート結果を踏まえ商品化する予定だ。島の店に並ぶ日が待ち遠しい。

 4月に復学し、就職活動に臨む。どんな道に進もうとも、島の経験が「新しい一歩を踏み出す糧になる」と信じている。

開発中の岩ガキの缶詰を手に持つ西野春華さん=2024年3月、島根県西ノ島町
岩ガキの缶詰の「塩レモン味」を使用したサラダ

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