ハイパーカー2台体制義務化の動き。ランボルギーニなど3メーカーはプログラム拡大の準備を進める

 WEC世界耐久選手権のトップカテゴリーに参戦しているキャデラック、ランボルギーニ、イソッタ・フラスキーニの3メーカーは、2025年シーズンに向けて2台体制への移行がレギュレーションで義務付けられる可能性があることを認めた。

 先週末にイタリアで開催された第2戦『イモラ6時間レース』を前に、WECの主催者が来年40台までグリッドを拡張する取り組みの一環として、各ハイパーカーメーカーが2台ずつエントリーする必要性をレギュレーションで義務づけることを評価していると報じられた。この件については来月にも電子投票が行われる予定だ。

 現在チップ・ガナッシ・レーシングが運営しているキャデラック・レーシングをはじめ、今季2024年から参入したランボルギーニ・アイアン・リンクス、イソッタ・フラスキーニ・デュケーヌはいずれも1台しかエントリーしていないため、仮に2台体制の義務化が決まれば直接的な影響を受けることになる。また、2025年にトップクラスに加わる『アストンマーティン・ヴァルキリー』を「少なくとも1台」エントリーさせると明言していたハート・オブ・レーシングチームもこの影響を受ける可能性がある。

 一方、『ポルシェ963』のカスタマーカーを走らせているハーツ・チーム・JOTAやプロトン・コンペティション、フェラーリのサテライトチームであるAFコルセといったカスタマーチームは、たとえレギュレーションに変更されたとしても影響はないと考えられている。

 ゼネラルモーターズ(GM)のスポーツカー・レーシング・プログラム・マネージャーであるローラ・ウォントロップ・クラウザーは、キャデラックによる2025年のプログラム計画について何も語らなかったが、必要であれば対応すると述べた。

「ルールはルールでしょう?」とクラウザー。「来年に向けた準備が整うのを待つ必要があります。私たちとしては、どのようなレギュレーションであるかを聞いたときにそれに対応しなければなりません」

 ランボルギーニのチーフ・テクニカル・オフィサーであるルーベン・モールは、2台体制がイタリアン・メーカーによる2シーズン目の計画にどのような影響を与えるかについては、「言うのはまだ早い」と述べた。ランボルギーニのレース車両は現在2台のみで、もう一台はIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のミシュラン・エンデュランス・カップに参戦している。

「もし、それが伝えられた場合、ランボルギーニ内外にどのような意味を持つのか、(それを評価するために)私たちのチームであるアイアン・リンクスとともに準備をしている」とモールは語った。

「境界条件にも少し依存するだろう。これはクルマだけの問題ではない。このような選手権を運営する場合、マーケティングなど多くの追加要素がある。ホスピタリティの問題やガレージの共有なども理解しなければならないんだ」

「些細なことがたくさんあるが、今のところ2台目のマシンを持つことにどんな意味があるのかは、まだはっきりしていない」

キャデラック・レーシングの2号車キャデラックVシリーズ.R  2024年WEC第2戦イモラ6時間レース

■9社継続+アストンマーティン参入ならカスタマーカー枠が減少

 今シーズン、WECにデビューしたイタリアのブティックメーカーであるイソッタ・フラスキーニは、『ティーポ6 LMHコンペティツィオーネ』をデュケーヌとベクター・スポーツにそれぞれ1台ずつ託す計画だったが、実際には前者のみがハイパーカー・プログラムを運営している。彼らにとって2025年に2台目のクルマを投入することは最大の課題となるだろう。

 デュケーヌのチーム代表であるマックス・ファバーはSportscar365に対し、チームはイソッタ・フラスキーニ社と「目下調整中」であると話したが、WECは小規模メーカーが将来シリーズに参加することを困難にするべきではないと警告した。

「(我々にとって)2台体制は大きな挑戦だ」と同氏は語る。

「考慮すべき多くのパラメーターがある。ドライバーのラインアップ、スポンサー……今年は2年目への進化をもたらす大きな年だ」

「それと同時に、2台体制の義務化は私たちが言わなければならないことでもある。人間的な構造の場合、2年目あるいは生き残るためにアップグレードが必要なら3年目にプロジェクトを固定することができる。2台体制が義務化されれば、グリッドの多様性は少し低下するだろう」

「これは我々も承知しているトピックであり、我々はルールを受け入れている」

「しかし、彼らはさまざまなアプローチで異なるメーカーに耳を傾けている。彼らは小さな組織を存続させるオプションを与えなければならない」

 ファバーは、イソッタが2025年に2台目のマシンを走らせるためには、資金の持ち込みができるドライバーを見つけることが「議論の一部」になると認めたうえで、イソッタから2台体制が受け入れられるだろうと楽観的な見通しを示した。

「もし(メーカーに)2台での参戦が求められるのであれば、(ルールに従い)2台のエントリーを提供しなければならない。WECはすべての異なるチームを考慮してこの問題を解決する必要がある。彼らは難しい決断を迫られている」

「(来シーズンに向けて)自信過剰になるべきではないが、私たちはこの方向で取り組む必要がある」

 40台のグリッドのうち計18台で構成されるLMGT3のフィールドに変更がないと仮定すると、ハイパーカークラスには2台体制の9チームが走らせる計18台と4台のカスタマカーが配置されることとなる。

 既存のメーカーがすべて継続参戦したうえでアストンマーティンが計画どおりに参加する場合、2台体制のチームから20台が参加するため顧客用のクルマが入るスペースは2台分となる。なお今シーズン、ハイパーカークラスに出場しているカスタマーカーは『ポルシェ963』が3台、『フェラーリ499P』が1台だ。

イソッタ・フラスキーニの11号車イソッタ・フラスキーニ・ティーポ6-C 2024年WEC第2戦イモラ6時間レース
カスタマーカーの1台である99号車ポルシェ963(プロトン・コンペティション) 2024年WEC第2戦イモラ6時間レース
プライベート・ハイパーカーチームの争いを制したAFコルセの83号車フェラーリ499P(ロバート・クビサ/ロバート・シュワルツマン/イーフェイ・イェ組) 2024年WEC第2戦イモラ6時間レース

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