生きづらさ抱えた人へ、希望の「居場所」完成 陸前高田

「生きづらさを抱える人が安心して過ごせる居場所になってほしい」。完成した「虹っ子の家」の前で、妻子の遺影を手に語る佐々木善仁さん=陸前高田市高田町

 東日本大震災で妻と、ひきこもりだった次男を亡くした陸前高田市広田町の元小学校長、佐々木善仁(よしひと)さん(73)が市中心部に整備を進めていた「居場所」が完成した。生きづらさを抱えた人たちが集まり心休まる空間として、5月末の開所を目指す。教員の仕事に明け暮れ、家族と向き合う時間をつくれなかった自責の念が構想の実現へ突き動かした。「女房の遺志であり、息子への償い」。妻子の思いを胸に刻み、未来への希望を膨らませる。

 災害公営住宅などが並ぶ市中心部にクリーム色の家が立つ。内装、間取りを確認した佐々木さんは「やっとここまで来た。もう少しで願いがかなう」と語り、妻みき子さん=当時(57)=と次男仁也さん=同(28)=の遺影を見つめた。

 完成した施設は木造平屋で床面積約80平方メートル。17日に引き渡された。運用方法はまだ決めていないが、居間や個室、キッチン、風呂を設け、24時間誰でも無料で利用できるようにする。建築、運営費は退職金やみき子さんが残してくれた預貯金などで賄う。自身はそばの災害公営住宅で暮らし、利用者の相談などに応じるつもりだ。

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