【4月25日付社説】こどもの読書週間/人生共にする一冊を探そう

 たくさんの読書体験は成長を後押ししてくれる。子どもたちは本を読む習慣を身に付け、日々をより楽しく、豊かにしよう。

 元日本図書館協会理事長の竹内哲(さとる)さんは著書「生きるための図書館」(岩波新書)に、「幼い時に本とは面白いもの、楽しいものだと知った子どもたちは、それからの人生に、本という強力な同行者を得ます」と記している。

 本は言葉や知識、世界に存在するさまざまな価値観などを教えてくれる。文章を1行ずつたどることで、日常では経験できない昔のことや遠くの世界を知り、空想世界などに浸ることもできる。物語であれば、主人公らが困難を克服する歩みなどに感動し、勇気や希望をもらえることがある。

 本を選ぶきっかけはどのようなものでもいい。内容が難しいなどの理由で最後まで読み切れなくても構わない。子どもたちは多くの本を手に取ってほしい。

 県教委が昨年度行った調査によると、1カ月に1冊も読まない人の割合は中学生が13%、高校生は42.7%に上る。読まない理由は「スマートフォン・携帯などのほうが楽しい」「勉強・塾・宿題などで忙しい」などとなっている。

 「読まなくても困らない」と答える高校生が例年1割程度いるというが、本の魅力の一つは読んでみないと分からない面白さだ。図書館にある多くの本の中から、周りの大人でも回答できない悩みへの答えや、多感な時期に寄り添ってくれる言葉などが見つかるかもしれない。求めている本を探すのを手伝ってくれる職員もいる。

 図書館を自分のペースで過ごせる居場所や休憩所と考えてもいい。本から遠ざかっている中高生らには、まず地域や学校の図書館に足を運ぶことを勧めたい。

 子どもの頃にたくさんの本を読んだ、または「好きな本」「忘れられない本」があると答えた大人は、1カ月の読書量や1日の読書時間が多いとの調査結果がある。子どもの頃の読書が、将来の習慣に強く関係する。

 竹内さんは「幼い時に読んだ本を後年手にすると、そのころの自分に出会える、というのも、本ならではのこと」とも記している。大人へと成長する過程で忘れがちな子どもの頃の感性を呼び起こす効果が本にはある。

 来月12日までは「こどもの読書週間」だ。保護者は、自分が小さい頃に好きだった絵本を子どもと一緒に読んだり、思春期に影響を受けた本を手渡したりしてみてはどうだろう。本を読む喜びを親子で分かち合ってほしい。

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