熊本市電、外国語対応に苦慮 行き先アナウンス、5カ国語案内ボード…進む利用客の多国籍化

熊本駅前電停に到着した市電に乗り込む観光客ら。大きな荷物を持つ外国人客も少なくない=8日、熊本市西区

 熊本県菊陽町への台湾積体電路製造(TSMC)進出を機に、熊本市を訪れる外国人観光客の増加が見込まれる中、市交通局が市電利用者の多言語対応に苦慮している。「日本語のアナウンスで、外国人は困惑しているようだ」。旅行客を見守る熊本の利用客からはこんな声も。熊本城や水前寺公園などの観光地をつなぐ市電の外国語対応がどうなっているのか探った。

 利用客がよく遭遇するというのが、市中心部を出発し、新水前寺駅前電停が終点となる車両で戸惑う外国人の姿だ。人気の水前寺公園は二つ先。運転士が「水前寺公園には行きません」と日本語でアナウンスするものの、外国人は理解できていないという。

 市交通局は、外国人の乗車が多い一部の電停で、出発前に行き先を伝える自動音声の車外アナウンスを日本語と英語で流している。4月には熊本駅前電停に加え、辛島町-水道町区間の各電停にも導入したが、この区間ではなぜか、英語での車外アナウンスは健軍町電停行きの車両だけだ。

 運行管理課は、新水前寺駅前電停が終点の市電は運行時間帯や本数が限られ、「臨時便扱いで、英語の車外アナウンスはしていなかった」と釈明する。指摘を受け、対応を検討するという。

 一方、運転士による外国語の車内アナウンスは、安全運行に支障が出かねないとして慎重だ。運転士には「出口はこちらです」「運賃は180円です」など、想定される外国人とのやりとりを5カ国語で記したコミュニケーションボードを配っており、当面はボードを使って対応する。

 市観光政策課によると、新型コロナウイルス禍で落ち込んだインバウンド(訪日客)需要は回復傾向。感染症法上の位置付けが5類に移行した2023年の外国人入り込み数(集計中)は、熊本-台北間の直行便の就航もあって約71万人だったコロナ禍前の19年の水準まで戻る勢いという。

 市交通局は英語、中国語、韓国語でそれぞれ作った市電案内リーフレットを市電の車内やホテルなどに置くほか、主要な電停に台湾語を含む5カ国語対応のデジタルサイネージ(電子掲示板)を導入。23年度には、外国人にも便利なタッチ決済を全ての車両に取り入れた。

 「多国籍化が進む中、複数の言語にどこまで対応すべきか」(運行管理課)と新たな悩みも。国際観光都市を目指す熊本市。多様化するニーズにスピード感のある対応が求められそうだ。(臼杵大介)

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