岩田剛典 花岡の謝罪は「すべてが集約された大事なシーン」初の朝ドラで主人公・寅子の同級生・花岡悟を熱演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。明律大学女子部を卒業した主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、同級生たちと共に法学部へ進学。男子学生と一緒に法律を学び始めた。そんな寅子の前に現れたのが、同級生の花岡悟だ。これから寅子と関わっていくことになる花岡を演じるのは、これが朝ドラ初出演となる岩田剛典。花岡の素顔が垣間見えた第19回の舞台裏や作品への思いを語ってくれた。

(C)NHK

-第19回、自分の言動を反省した花岡は、傷つけてしまった女子学生の大庭梅子(平岩紙)に謝罪し、隠していた本心を打ち明けました。これまで鼻につく言動もあった花岡の素顔が垣間見え、その印象が変わる転機となるシーンですが、演じる上ではどんなことを心掛けましたか。

あそこは、花岡悟のすべてが集約されていると言っても過言ではないくらい、花岡にとってはもちろん、僕にとってもキャラクターを作る上で大事なシーンでした。ある意味、それまでの全てはこのシーンの伏線だったんじゃないかと思ったくらいです。演じるに当たっては、家庭の事情など、せりふに書かれている花岡のバックグラウンドを、自分の中で膨らませながら、感情を込めて丁寧に向き合って演じました。

-花岡の謝罪につながる第18回、ハイキングに行った先で寅子たち女子学生と口論になり、花岡が崖から転落した時はハラハラしました。あのシーンの撮影はいかがでしたか。

ハイキングのシーンは、昨年の10月上旬くらいに撮影しましたが、秋とは思えないくらい暑い日で大変でした。皆さん、日傘を差したり、水分補給したりしながら撮影を進めていって。しかも、1日ですべて撮影する予定だったので、転落シーンを撮影するときは、他の役者さんはみんな帰ってしまい、僕が1人だけ居残りでワイヤーにつられているような状況だったんです(苦笑)。ただそのかいあって、日没ギリギリになりましたが、何とか無事に撮影を終えることができました。

-ここで改めて、「虎に翼」への出演が決まった際の感想と、周囲の反響を教えてください。

子どもの頃から朝ドラが生活の一部にある家庭で育ったので、両親が喜んでくれるだろうとうれしかったですね。周りの友人や先輩方は「おめでとう」と言葉を掛けてくれましたが、テレビドラマの出演が決まってそんなふうに祝ってもらえることは他にないので、朝ドラの影響力の大きさを、身をもって感じました。しかも僕自身、大学は法学部出身だったので、初めての朝ドラで法を題材にした作品に出演できることもご縁があるなと。

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-懐かしさを感じる部分も?

僕も学生服を着ていたので、懐かしい気持ちになりました。階段教室のセットも大学時代を思い出し、久しぶりの感覚にもなって。いまだに学生役を演じられることは、役者冥利(みょうり)に尽きます。その一方で、男尊女卑の激しい時代背景には驚かされました。こんなにも女性には発言権や決定権が与えられていなかったのかと。この作品の大きなテーマでもあるので、そういう思想はせりふの端々にも表れていますが、社会に出る前の学生ですら、そんな教育を受けていて、国民性そのものが現代と違っていたんだなと実感しました。

-初めての朝ドラの現場はいかがですか。

毎週、リハーサルの日があるんですよね。うわさには聞いていましたが、民放のドラマにはないことなので、新鮮な体験です。その日は舞台の立稽古のようにリハーサルを行い、撮影当日に改めて段取り、テスト、本番という段取りで進むので、普通の連ドラよりも工程がひとつ多いんです。その分、丁寧に作られているなと感じました。

-主演の伊藤沙莉さんの印象は?

伊藤さんは堂々としていて、ものすごく安心感のある座長です。演技もどっしりしていますし、現場のムードメーカーでもあって。ご自身も大変なスケジュールの中で日々を過ごしているにもかかわらず、共演者やスタッフの皆さんを気遣って声をかける姿を見ていると、「この人のために、自分も頑張りたい」という気にさせられます。そういう意味では、彼女のフランクな性格が、この作品に血となって通っている部分が大きい気がします。今回、共演できて本当によかったです。

-本音を打ち明けた花岡がこれからどうなるのか気になるところですが、今後の見どころを教えてください。

元々花岡は、男性社会の中では、いわゆる“ヒエラルキー”の上位にいる学生だったと思うんです。ただ、その中での自分の立ち位置に満足しているような小心者だったんじゃないかなと。そんな花岡も、梅子への謝罪をきっかけに、寅子たち女性陣に感化され、考え方が次第に変わっていきます。気になる寅子との恋模様も含め、これから花岡のいろんな面が見えてくるので、ぜひ楽しみにしていてください。

(取材・文/井上健一)

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