【消滅自治体】データを覆すには(4月25日)

 またしても、地方自治体の危機を示すデータが公表された。経済界有志や有識者らでつくる人口戦略会議は全体の40%超の744自治体が「消滅可能性」があるとの報告書を発表した。県内は33の市町村が該当した。人口減対策は待ったなしだ。地域の実情に合った施策の一層の推進を求めたい。

 報告書は2020(令和2)年から2050年の30年間で、子どもを産む中心の年代となる20~39歳の女性が半数以下となる自治体を「消滅可能性」があるとした。別の民間組織の日本創成会議が10年前に公表した報告書では896の自治体が「消滅可能性」だった。見た目では該当自治体は150程度減少しているが、人口戦略会議は外国人住民の増加が要因で、少子化そのものには歯止めがかかっていないと分析している。

 原発事故の影響を踏まえ、10年前は県内の具体的な自治体名は公表されておらず、今回も浜通りを一つの自治体として集計している。33の市町村は県内全体の7割に当たる。全国を大幅に上回っている。さらに驚くのは会津若松、白河、喜多方、二本松、田村、伊達の6市も「消滅可能性」に分類された。比較的人口規模の大きい市といえども予断を許さない実態が明らかになったと言えるだろう。

 100年後も若年女性が5割近く残る「自立持続可能性」の高い自治体は県内にはなかった。「消滅可能性」に該当しなかった14の自治体も含め、県内全体の問題として捉えることが重要だ。若者の所得向上や首都圏に一度は移転しても戻ってきたくなるような環境づくり、住環境の整備など市町村の境を越えた取り組みにも期待したい。

 今回は若年女性の減少率に着目しているが、注目したいのは大玉村や磐梯町、柳津町、西郷村といった町村が減少率を抑えていることだ。こうした自治体の取り組みを参考にしてはどうだろう。それぞれ、地理的優位性の活用やITの推進による職場環境の改善、子育て支援の充実など特色ある施策が若年女性の好感を得ているように感じる。

 自治体同士の人の争奪戦では問題は解決しない。それぞれの自治体の特色を出しながらも、結婚、出産、育児に前向きになれる地域づくりを進めたい。(安斎康史)

© 株式会社福島民報社