「特別アラート」始まる

 江戸の川柳に〈春夏をふらふらまたぐ藤の花〉とある。藤の名所として知られる佐世保市の藤山神社で満開を迎えたその花の写真が、先日の紙面を飾っていた。紫の糸で編まれた緞帳(どんちょう)のような藤棚に見とれる▲春と夏をまたぐように、藤の花は風にふらふら揺れる。気が早いようだが、初夏はそこまで来ているのかもしれない。列島を見渡せば、3月末なのに最高気温が25度以上の夏日になる所もあった▲「初夏の便り」どころか、それを通り越して「真夏の心得」が環境省から届いた。熱中症の「特別警戒アラート(警報)」の運用がきのう始まり、猛暑の“被害”を抑える策が強められる▲「警戒アラート」は4年前から運用中だが、過去にない危険な暑さがこの先も想定され、一段上の「特別アラート」が必要になったらしい▲発表されれば、公民館に図書館、ショッピングセンターと、市町が前もって決めておく避難施設「クーリングシェルター」が一般開放される。「涼み処(どころ)」と訳せば風情もあるが、外出中に熱中症で倒れる人を減らす苦肉の策という▲1日に30分歩く、2日に1回は湯船に浸かる…と、今のうちから暑さに慣れておくのも大事と聞く。春の花々や新緑をめでながら、体は着々と夏に備える。〈春夏をふらふらまたぐ〉藤の花にならいたい。(徹)

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