「下肢静脈瘤」による足のだるさを改善させるには?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

下肢静脈瘤は高齢になるにつれ罹患率が高くなる

【日本版「足病医」が足のトラブル解決】#15

「夕方になるにつれ足のむくみがひどく、夜中はこむら返りで目が覚める日が続いています。先日、病院を受診したところ『下肢静脈瘤』と診断されました。高齢なのでなるべく手術は受けたくないのですが……」

そう話すのは、都内に住む80代の女性。下肢静脈瘤は高齢になるにつれ罹患率が高くなる足の病気で、国内の患者数は1000万人とされています。

下肢の静脈は、ふくらはぎの筋肉のポンプ機能を利用して血液を心臓へ戻している血管で、逆流を防ぐために弁が付いています。静脈瘤は弁のしまりが悪くなり下肢の静脈に血液がたまる病気で、発症すると足の皮膚の下で血管がボコボコと盛り上がったり、むくみやかゆみ、だるさの症状が見られます。

女性に多い疾患のひとつで、出産経験のある女性の2人に1人が下肢静脈瘤を発症するとの報告もあります。

妊娠中は子宮が大きくなり骨盤内の静脈を圧迫して下肢の静脈の流れが悪くなるほか、女性ホルモンの影響で血管が拡張しやすいからです。

下肢静脈瘤は放置していても命に関わる病気ではありません。しかし、自然に治ることはなく、進行すると血管のコブが目立ちやすくなり、足のだるさが悪化して日常生活に支障を来すようになります。

そういった方に有効なのが「弾性ストッキング」の着用です。弾性ストッキングは足を圧迫することを目的として特殊な編み方で作られた医療用のストッキングで、主に弱圧、中圧、強圧の3段階に分けられます。弾性ストッキングで足を締め付けると、静脈の血流が促進され、むくみやだるさ、つりやすさなどの症状が改善されます。

下肢静脈瘤の場合、弱圧または中圧のハイソックスタイプがおすすめです。冒頭の女性も、1カ月後の外来で、弾性ストッキングの着用によりむくみが改善され、毎晩足がつることもなくなったと笑顔を見せていました。

ただし、弾性ストッキングはむくみなどの症状を改善できても、足にできたコブを消すことはできません。

足の皮膚が茶色に色素沈着していたり、皮膚に穴があくうっ滞性潰瘍を起こしている場合には感染症を起こしやすいので、手術を受ける必要があります。

▽松原忍(まつばら・しのぶ)琉球大学卒業後、同大学胸部心臓血管外科教室へ入局。末梢血管疾患の診療に携わった後、横浜市立大学形成外科でリンパ浮腫に対する手術法を学ぶ。2020年から順天堂医院足の疾患センターでリンパ浮腫診療を開始。24年4月から現職。

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