豪BHP、英アングロに388億ドルで買収提案 銅生産で世界首位も

Scott Murdoch Anousha Sakoui

[メルボルン/ロンドン 25日 ロイター] - 豪資源大手BHPグループは25日、英同業アングロ・アメリカンに対し、388億ドルの買収提案を行ったと発表した。これを受けてアングロの株価は13%上昇した。

買収提案額は1株当たり25.08ポンド(31.39ドル)で、アングロの株価に31%上乗せした。BHPが資産を保有していない南アフリカの鉄鉱石とプラチナ資産を切り離すとしている。

アングロは取締役会が買収案を検討していると述べた。英国の買収規則の下で、BHPは5月22日までに正式な提案をする必要がある。

買収が実現すれば、クリーンエネルギーへの移行で重要性が高まる銅の生産で世界の約10%のシェアを握る最大手が誕生することになる。またさらなる業界再編につながる可能性が高い。

トライベッカ・インベストメント・パートナーズのポートフォリオマネジャー、ベン・クリアリー氏は「BHPにとって良い取引だと思う。アングロが非常に重要な位置にあるのは明らかで、恐らく他社が参入する余地もある。業界全体に火をつけることになるだろう」と語った。

アングロは通年ベースで94%の減益に陥り、非鉄金属関連の減損処理が相次いだことを受けて2月に資産の見直しを開始していた。

BHPは上場鉱山会社としては世界首位で時価総額は24日時点で1490億ドルに上る。アングロは時価が377億ドル。

BHPは2023年に銅鉱山会社オズ・ミネラルズを買収しており、約1年で2回目の大型買収になる。鉱業部門の買収規模としては過去10位に入る公算が大きい。ロンドン証券取引所に上場するアングロ株は上場廃止になる可能性があり、同取引所には痛手となる。

BHPがアングロの合意を得るにはより高い金額を提示する必要があるとの声もある。コンサルティング会社MKPのマーク・ケリー氏は、BHPが提示している上乗せ額ではアングロの経営陣が同意する可能性はほとんどないと語った。

ジェフリーズのアナリストは銅市場の支配力が高まれば反トラスト法の観点から懸念が生じるかもしれないとした。

<銅>

アングロの買収に成功すればBHPはクリーンエネルギーへの移行に重要な銅や同社の主要戦略商品であるカリウム、さらにオーストラリアの原料炭の生産を増やすことができる。

人工知能(AI)やオートメーションといった技術革新やエネルギー転換により銅電線の需要は高まっている。アングロとBHPの銅生産能力は合計で年間260万トン程度と、世界全体の約10%を占める。米フリーポート・マクモランやチリ国営鉱山会社コデルコを大きく上回る。

ロンドン金属取引所(LME)の銅価格は年初から15%上昇し、1トン当たり1万ドルの節目に迫っている。

<資産売却>

買収は、アングロ・アメリカンが保有するアングロ・アメリカン・プラチナムとクンバ・アイアン・オアの全株式をアングロ・アメリカンの株主に譲渡することが前提条件になる。譲渡により南アフリカ関連の保有資産が大幅に減少することになる。

調査会社クロスASEANリサーチのアナリストは「アングロは南アフリカ資産の不調で打撃を受けている。つまり買収対象になる機は熟している」と述べた。

24日の取引終了時点に基づくLSEGのデータによると、アングロ・アメリカン・プラチナムの時価総額は74億4000万ドル、クンバ・アイアンは54億ドル。

BHPはダイヤモンドなどアングロの他の事業については、買収完了後に戦略的な見直しを行うとした。アングロはダイヤモンド大手デビアスの株式85%を所有している。

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