愛情込めた花贈り11年 大槌の復興願い 二戸の高村さん夫妻、活動一区切り

美しい花の苗を大槌町で阿部智子代表(中央)に引き渡す高村英世さん(右)、民子さん。活動は今年で一区切りとなる(二戸市提供)

 二戸市の農業高村英世さん(83)は22日、東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県大槌町の復興を願い、同町の地域団体「おおちゃん花くらぶ」(阿部智子代表)に自ら育てたパンジーとビオラの苗約420本を贈った。11年目を迎えた活動は、自身の高齢化などもあり一区切りとなるが、高村さんは「愛情を込めて育てた花を、市の協力も受けて毎年贈ることができた」と感謝している。

 子どもの頃、故井上ひさしさん原作のNHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」が大好きだった高村さん。モデルとされる島がある同町に親近感を抱いていた。

 震災後は「自分にとって夢の世界のようなイメージがある、大槌の復興に協力したい」と決意。被災した人々の悲しみを癒やそうと、妻民子さん(80)と共に育てた花を贈り続けてきた。現地まで運ぶ作業は、市職員が同行し手伝った。

 震災から10年目の2021年には、同町の平野公三町長が同市を訪れ、高村さん夫妻に感謝状を贈った。その後も英世さんは「もう一頑張りして、美しい花を届けたい」と善意の活動を続けてきたが、今年で最後とすることを決めた。

 22日も黄色やピンクなど色とりどりの苗を車に積み、市職員と同町へ届けた。受け取った阿部代表(58)は「葉が生き生きとした良い苗を毎年頂き、高村さん夫妻の気持ちをありがたく受け取ってきた。今後も町内で花を植える活動は継続したい」と感謝した。

 英世さんは「大槌とは切っても切れない縁がある。一生懸命に育てた苗を運んでくれる市職員、現地で花を咲かせてくれる地域団体の協力もあり、長く続けてこられた」としみじみ。

 民子さんは「阿部さんと別れるのは寂しくて涙が出た。活動は一区切りとなるが、苗作りは体が動く限りやっていきたい」と話した。苗は町内の国道45号沿いの花壇に植えられる予定。【全文】

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