“一歩目”の不安を取りのぞきたい――。 ネクストキャリアに対する斎藤佑樹の思いを形に

―― スポーツビジネスを幅広く展開する株式会社シーソーゲームでの取締役兼CIO(Chief Innovation Officer)就任が発表されたのが2023年12月。当初から「実現したいこと」として挙げていたアスリートのネクストキャリアを考える新サービス『アスミチ』がリリースされました。

僕自身がプロ野球選手として活動した11年間においても、セカンドキャリアは野球界全体の課題とされていました。ただ、僕自身がそれを“自分ごと”として認識したのは引退を決断してからです。そのタイミングで初めて、選手それぞれのセカンドキャリアの選択肢が可視化できるプラットフォームがあれば、現役選手たちの悩みや不安を少しでも解消することができるのではと考えました。

―― 2021年限りでの現役引退後、ご自身は「株式会社斎藤佑樹」を立ち上げ、その経営者になるという道を選択されましたね。

「正直なところ、僕の場合は「やってみよう」という勢いで決断したところもあったので、「もしも他の選択肢があったら」と考えたこともありました。プロ野球選手でいる間は野球のことだけを考えたいけれど、それが終わりを迎えた瞬間は誰だって不安に駆られるし、かといってゆっくり準備する時間もない。だから、現役中から少しでもネクストキャリアに対する選択肢を持てていれば、もっと気持ちが楽になるし、もっと野球に集中できるかもしれないと考えたんです。

―― 現役時代は「野球だけに集中する」より「将来の選択肢を持っておく」ほうが、結果的にポジティブかもしれないという考え方ですよね。

現役時代の僕自身のスタンスは“野球だけに集中する派”でした。でも、引退した今になって思うのは、“野球以外”の世界についての知識や理解、あるいは将来に対する希望的な感覚を持てているほうが、実はプロ野球選手としてのキャリアにもポジティブな影響をもたらすのではないかということです。もちろんそれはすべての選手に当てはまることではないけれど、現状は“野球以外のことを知ることで野球に集中できる人”をサポートする仕組みが存在しません。そこに『アスミチ』のニーズがあると思っています。

―― 具体的にはどのようなサービスを提供する予定ですか?

元プロ野球選手のネクストキャリアの選択事例を“生の声”として紹介することはもちろん、そこに情報を集め、発信することでネクストキャリアについての可能性や選択肢を提供する場にしたいと考えています。「自分は野球しか知らないから」という理由で自ら選択肢を削ってしまうのはあまりにももったいない。プロ野球の舞台に立つまでひたむきに努力してきたエネルギーは、どんな世界でも必ず活かせると僕は思います。それを“人材”として求めている人も必ずいる。プロ野球選手の人生をプロ野球の世界だけで終わらせないように、まずは、その一歩目の不安を少しでも取りのぞけるような窓口になれたらと考えています。

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取材=細江克弥
撮影=原⽥健太
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