豊島区「消滅可能性都市」脱却も…都が抱える課題

2014年に発表された「消滅可能性都市」…20歳から39歳の若年女性の人口が30年間で半分以上減る可能性がある自治体を呼び、各自治体の政策にも大きく影響を与えました。そして4月24日、「消滅可能性自治体」と名前を変えて10年ぶりに発表されました。前回の発表では23区内で唯一対象となっていた豊島区は、今回「消滅の可能性」からの脱却を果たしましたが、一方で都内全体が抱える大きな課題も見えてきました。

人口戦略会議が4月24日、全国の4割を超える744の自治体が「消滅可能性自治体」の対象になったと発表しました。都内では、前回に引き続き檜原村と奥多摩村が対象となる一方で、23区内で唯一対象となっていた豊島区は脱却を果たしました。消滅可能性からの脱却について高際区長は…

豊島区 高際区長:「街として活気もあるし、子育て世帯の人たちもいろいろなサービスを利用しながら暮らしていただいているのを肌感覚で実感しているので、脱却ということでは良かった、ほっとしています」

2014年に指摘されて以降、豊島区は対策本部を立ち上げ、「子どもと女性にやさしいまちづくり」を推進してきました。保育所の整備を進め、2017年以降は待機児童ほぼゼロを達成しているほか、池袋駅周辺にある大規模な公園を整備しました。また、若年女性への支援も強化し2021年に自治体で初めて、生理用品の無料配布などを行ってきました。こうした動きに区民も街の変化を感じているようです。

「マンションがいっぱい建っていますし、比較的に若い方々が多く増えているように思いますね」「最近小学校のクラスも少しずつ増えているという言うし、ちょっと嬉しい話ですよね」「新しいものが定期的に入って来ていて、そういうところが住んでいる間はずっと楽しく過ごせるのがいいと思います」

その一方で、課題も。厚労省が今月19日に発表した、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数である合計特殊出生率をみてみると、全国平均が1.33だったのに対し豊島区は0.89と都内で最も低く、全国ではワースト7位となっています。高際区長は今後について、子育て支援の強化を掲げます。

豊島区 高際区長:「産む前から1歳になるまでというのが一番大変な時。そこを切れ目なくしっかり応援していく。ここで子どもを育てながら暮らし続けたいという方が希望が叶えられるような施策の充実は、今年も来年もしっかりやりたい」

分析を行った人口戦略会議は、前回の消滅可能性都市の発表は全国の自治体に大きな影響を与え、人口流出を止めるための対策や移住を呼び込む取り組みなどが進んだとしていますが、一方で自治体間で若い世代の人口を奪い合うかのような状況も見られ、根本的な人口減少の対策には繋がっていかなかったとしています。

そこで今回は、自治体の消滅の可能性を分析する上で新たな視点が加わり、若い世代の女性の人口の変化を2つの要因で分析しています。一つが人口流入・流出による変化、そしてもう一つが出生率にも繋がる出生・死亡による変化です。これによって減少の要因を明確にすることにつながり、地域に必要な対策がわかるとしています。

その上で、人口流入が多く消滅可能性自治体には当たらないものの、出生率が低い自治体をブラックホール型と名づけていて、23区の16自治体と青ヶ島村の17の自治体がこれに該当しています。

人口戦略会議の増田副議長は、このブラックホール型の自治体について「自治体はもちろん、企業や地域に問題意識を広め、働き方や男性の育児参加地域全体での後押しなど、若い世代をサポートする対策を講じる必要がある」としています。

都内の多くの自治体では今後、ブラックホール型自治体からの脱却が政策の道しるべとなりそうです。

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