倉敷古城池高校生が案内する水島コンビナートクルーズ(2024年3月23日開催)~ 水島コンビナートの景色を通船から、高校生の解説と共に楽しもう

2022年度から、全国の高等学校で「総合的な探究の時間」が始まりました。

岡山県立倉敷古城池高等学校(以下、倉敷古城池高校)の生徒と水島通船・みずしま滞在型環境学習コンソーシアムが、「総合的な探究の時間」で作り上げたクルーズが運行するとのことで、私も乗船してきました。

「総合的な探究の時間」とは

「総合的な探究の時間」は、2018年の学習指導要領改訂を受けて2022年度より全国の高等学校で始まった新しい科目です。

文部科学省から出された高等学校学習指導要領解説(平成30年告示)によると、教科や科目の枠を越えて以下の三つの力を育成することを目的としています。

  • 探求の過程において、課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探求の意義や価値を理解するようにする
  • 実社会や実生活と自己の関りから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現できるようにする
  • 探求に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさをいかしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養う

今回の水島コンビナートクルーズのように地域の人と協力した学びが、今後ますます必要になっていくことでしょう。

水島コンビナートクルーズ

水島コンビナートクルーズは、みずしま滞在型環境学習コンソーシアムが協力し、水島通船が主催となって2024年3月23日(土)に開催されました。

今回は、倉敷古城池高校の探求学習とコラボレーションした企画で、同校の高校生がクルーズの案内役。

水島コンビナート夜景

普段は、鷲羽山スカイラインなどの「山側から見る景色」というイメージが強い水島コンビナートの景色を、解説付きで海から見られる貴重な機会です。

地域のみんなで若者の挑戦を応援するクルーズ

クルーズ当日は朝から雨でしたが、乗船時間は曇り予想とのことで参加者は傘を持って集合場所の水島臨海鉄道 水島駅の1階に集合。

今回のクルーズの趣旨について、みずしま滞在型環境学習コンソーシアムの担当者から説明を受けます。

この日は、倉敷古城池高校の生徒が作った水島コンビナートクルーズのパンフレットをはじめ、水島の地域おこし協力隊が作った焼肉マップなど、地域で活動する人が作成した資料が多数配布されました。

その後、参加者全員で水島港通船待合所に移動。この日、クルーズの案内役を務める倉敷古城池高校の生徒たちの自己紹介と意気込みを聞いて約1時間のクルーズが始まりました。

写真提供:古川明

普段はなかなか乗れない「通船」で楽しむクルーズ

クルーズで乗船する船は「通船(つうせん)」と呼ばれる働く船です。

この船は、海洋を航行している船や海洋上に錨泊(びょうはく)している船の船員を陸上に運ぶ役割をしています。

瀬戸内海に臨む水島地域から玉島地域にわたる水島港は、中国やベトナムなど21の定期航路が就航している国内屈指の国際貿易港。今回はそれらの船で働く人たちと陸をつなぐ、働く船に乗れる貴重な機会です。

船室は小さめで、ほとんどの参加者は外の甲板に出てクルーズを楽しみます。

船室の参加者

高校生が学びの成果を発揮しながら案内するクルーズ

水島コンビナートクルーズ一番の目玉は、倉敷古城池高校の生徒による水島コンビナートの解説です。

この解説は、古城池高校の生徒たちが1年間「総合的な探究の時間」に学習を積み重ねながら試行錯誤して作成したもの。

今回のクルーズの協力団体である「みずしま滞在型環境学習コンソーシアム」と共同で学習を進めたとのこと。

水島コンビナートを形成する会社や工場の特徴だけでなく、各社がどのように環境へ配慮した工場運営をおこなっているかなど、踏み込んだ部分まで解説されました。

西日本最大級の穀物基地
中国電力は、環境への配慮を表現して緑色の煙突を設置したのだとか。

参加者たちも生徒たちの学びに応えるように、熱心にメモを取る姿が印象的でした。

海上から水島コンビナートを見られるクルーズ

全国夜景100選に選ばれるほど、絶景スポットとしても知られる水島コンビナート。

普段は鷲羽山スカイラインや通仙園といった、陸地側から眺めることの多い水島コンビナートの景色を海上から見上げられる、水島コンビナートクルーズの醍醐味です。

どの参加者も物珍しい景色に、スマートフォンやカメラのシャッターを押す手が止まりません。

特に、出荷を待つ岸壁に止まる新車やずらっと並ぶタグボート(港内の水先案内や方向転換、防災の海の拠点として活躍)は、水上だからこそ見られる景色です。

海上に並ぶタグボート
出荷を待つ新車

初めての水島コンビナートクルーズに大興奮の私も、1時間ほどのクルーズで300枚近い写真を撮りました。

船が常に動いていて常にシャッターチャンスなので、写真が趣味の人はハマってしまうのではないでしょうか。

おわりに

小雨降るなかスタートした水島コンビナートクルーズでしたが、倉敷古城池高校の生徒たちの元気なパワーのおかげか、出港後は雨に降られることもなく、また通船も大きく揺れることなく無事に1時間のクルーズを終えました。

案内役をした生徒たちも最初は不安げな表情でしたが、クルーズを終えて水島港に戻ってくると達成感に満ちあふれたようでした。

小学校や中学校は「総合的な学習の時間」という名称ですが、学習内容は高等学校の「総合的な探究の時間」と同様に3つの柱を軸としたカリキュラムが求められています。

今後ますます、水島コンビナートクルーズのように学校と地域がともに子どもたちと学んでいく機会が増えていくことでしょう。

子どもたちにとっても学校にとっても、そして地域にとっても学びの深まる意義あるクルーズだと感じさせられるイベントでした。

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