自転車の交通違反に「青切符導入」へ 携帯電話の使用で反則金は1万2000円 背景には自転車事故増加が…

自転車の交通違反に「1万円以上の反則金」。こう聞いて皆さんはどう思うだろうか。自転車の事故を無くすために政府が導入する方針の「青切符」。一方で、自転車の交通ルールは浸透していない現状も。制度の概要や街の人の反応などを取材した。

自転車の交通違反に「青切符」導入へ

多くの自転車が行き交う昼過ぎの大分県大分市の中心部。そこでは次のような光景が…
携帯電話で通話しながら自転車に乗っている人…、一時停止の標識があるが、停まらずそのまま走行している人…

大分県警によると、自転車の交通違反は交通ルール自体が十分に浸透していないため、本人も違反と認識していないケースが多くあるという。
自転車による事故が後を絶たないため政府は3月、自転車の交通違反に反則金を科す「青切符」の導入を盛り込んだ道路交通法の改正案を閣議決定した。
国会の審議を経て、2年後の施行を目指している。

違反には1万円以上の反則金も

現在、自転車の交通違反は「刑事罰」の対象となる「赤切符」のみの交付となっているが、手続きに時間がかかる上、起訴される違反者もわずかだったという。

青切符の導入は効率的な取り締まりを進めることが目的。改正案では16歳以上が対象で、違反した場合は反則金が科される。違反は一時不停止や信号無視など約110種類に上り、反則金は原付バイクと同じ5000円から1万2000円と想定されていて、反則金を納めれば刑事罰は免れる。

背景には自転車事故の増加が…

警察庁によると、全国で発生した自転車が関係する交通事故は、2022年は6万9985件で、2020年から2年連続で増加。
また、大分県内では2023年の1年間で302件の自転車が関係する事故が発生していて、このうち半分近くが前方不注意などの安全運転義務違反や、信号無視などの自転車の違反行為によるものだったという。

「自転車に赤切符交付」ハードルが高い現状も

大分県弁護士会所属の平松まゆき弁護士は次のように指摘する。

「これまで自転車には青切符で反則金を納める制度が無かったため、取り締まるためには赤切符を交付し起訴、その後、刑事裁判という手段しかなかった。自動車でも反則金で済むのに、自転車で起訴までするかというと、警察や検察もためらう部分があり結果、自転車の赤切符制度は機能していないのが現状。近年は、フードデリバリーの普及で自転車ユーザーが急速に増えている。スピードを出して無謀な運転をする人も多くなった。そこで自転車ユーザーの意識を高め、抑止力を働かせる意味で青切符制度の導入に至ったということ。自転車はこれまでいきなり裁判しかなかったところに、一歩手前の反則金という制度が出来るわけなので、取り締まり強化ではなく、むしろ緩和という考え方も出来る」(平松まゆき弁護士)

自転車のどのような行為が違反になるのか。
次の4つを違反を紹介する。(反則金額は原付バイクの場合)

①道路の右側を通行するなどの通行区分違反
②一時不停止
③警報が鳴っているときに踏切内に入る遮断踏切への立ち入り
④携帯電話などの使用

特に携帯電話の使用は、交通事故の原因の中でも割合が高いことなどから、反則金は1万2000円と他の違反よりも厳しくなっている。

街の人からは、「やばい、そんなに交通違反を知らない」「致し方ないかなとは思う、自転車でも結構死亡事故とかも 近年多くなっているのでそこは守っていかないといけない」「目に付くところに交通違反の看板やポスターでもみんなが気をつけられるような感じにしてもらえるのであれば大丈夫だと思う」などと言った声が聞かれた。

「青切符」はより安全安心な環境をつくるため

警察庁の有識者検討会で委員を務めた小林成基さんは、今回の法改正は取り締まり強化が大きな目的ではないと話す。

「自転車を安全に使うように指導、教育していくことが主眼。周囲に危険を及ぼす可能性があるからこういう違反をしないでください、ルールを守ってと指導・警告を教育的にやっていくということ」(小林成基理事長)

そして「自転車の活用は健康を維持するためにも重要であるため、青切符の導入はより安全で安心な環境をつくるための取り組みであると認識して欲しい」と話す。

また、平松まゆき弁護士は、「自転車の交通ルールを、若い世代に教育していくことが必要。交通ルールを知らなければ、いくら青切符を導入したところで運転の危険性に自覚が持てない。学校教育の中に、教習所で教わるような交通ルールの授業があってもいいと思うし、やるべき。また自転車保険も重要。自転車だからと侮らず保険に入ってもらいたい」と話している。

(テレビ大分)

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