大ヒットドラマ『涙の女王』第7話で、クイーンズ財閥の婿である主人公ペク・ヒョヌ(キム・スヒョン)を尾行している男たち(コ・ギュピル、イム・チョルス)が、財閥副会長ホン・ボムジュン(チョン・ジニョン)に結果を知らせるシーンがある。
そのなかに、ヒョヌが「毎夜、『ハルモニソンマッ食堂』というペクパンチプでごはんを食べている」という報告があった。
今回はこの「ペクパンチプ」について紹介しよう。
■『涙の女王』前半、主人公ヒョヌは毎晩、定食屋で一人メシを食べていた
ペクパンチプの「ペクパン」は「白飯」の韓国語読み。「チプ」は「家」や「店」を表す固有語だ。日本語字幕の通り「定食の店」が適訳である。
日本の旅行者がペクパンチプで食事する機会はあまりないだろう。旅行者はほとんどの場合、肉料理とか魚料理など何らかの専門店に行くからだ。
そうした店は「○○タッカンマリ」とか「○○ナクチポックム」のように店名にメインの料理名が入っていることが多い。
劇中の「ハルモニソンマッ食堂」という店名は、「おばあちゃんの手作り食堂」のような意味だ。看板には「家庭式韓定食専門店」とある。
韓定食というとテーブルいっぱいに料理が並ぶ豪華なものを想像するが、「家庭式」という言葉が冠されると、大衆的な料理だとわかる。まさに定食である。
■ペクパンの店は駅前やオフィス街の雑居ビル地下にある
外国人観光客が、ヒョヌが通っているようなペクパンチプを探すのは容易ではないかもしれない。旅行サイトやガイドブックにはあまり載っていないからだ。
ソウルの地下鉄1号線「鐘路3街」駅15番出入口の南側の路地にある人気店「全州食堂」は、定食の店ではあるが、センソンクイ(焼魚)がメインなので、いわゆるペクパンチプとはちょっと違う。
ソウルでペクパンチプを探すなら、駅前やオフィス街の雑居ビル地下1階に降りれば、たいてい飲食店が数軒あるので、そのなかの1、2軒はペクパンチプである可能性が高い。ランチどきにお客さんで賑わっている店を選べば外れはないだろう。
そうした店で、メニューに「ペクパン」とあったら、それは「日替わり定食」のことだ。一品料理のチゲやタンより小さめの器に入った汁物とごはんに、キムチやナムル、海苔などが3品~5品添えられる。ちなみに、劇中でヒョヌが食べていたテジプルとは、テジプルコギペクパン(豚焼肉定食)のことだ。
地方に行くとおかずが2~3品増える。ペクパンには店側が早く消費したい材料が使われるので、その店でいちばん安い料理よりも1,000ウォンほど安いことが多い。ソウル中心部なら8,000ウォンはするだろう。毎日外食する人にとってはそれでもありがたい。
財閥のお嬢さんのホン・ヘイン(キム・ジウォン)と結婚しても、自分らしいつましさを忘れないヒョヌの気持ちに寄り添う意味で、日本のみなさんにも一度、ペクパンを体験してもらいたい。