「J2のベンチ」の翌年にACL決勝へ――マリノス新守護神の“成り上がり” 「自分で切り開いていくのがサッカー選手の人生」

横浜F・マリノスは4月24日、アジア・チャンピオンズリーグの準決勝・第2レグで、蔚山現代とホームで対戦。2戦合計3-3で突入したPK戦を制し、見事に決勝進出を果たした。

敵地での第1レグは決め手を欠き、0-1で敗戦。ただ、今回は開始13分で植中朝日が奪った先制点を皮切りに、30分で3ゴール。一気に形勢を逆転するが、それも束の間、36分、42分と連続で被弾して追いつかれたうえ、上島拓巳がレッドカードを食らい、数的不利となる。

今季ベストゲームと称せるような序盤から打って変わって、韓国王者の猛攻に耐える時間が続くも、ポープ・ウィリアムの再三の好守で勝ち越し点を阻止。なんとかPK戦に持ち込むと、再びポープのビッグセーブが生まれ、歓喜の瞬間を迎えた。

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頼れる守護神は試合後、UAEの雄アル・アインとの決勝に向け、力強くこう意気込みを示した。

「本当に大きな大会ですし、これを獲るか獲らないかでクラブの今後も変わってくると思います。そういうなかでもプレッシャーを楽しみながら。自分自身、どの試合も優劣はつけずにやってきたつもりなので、そういう大きな大会だからと言って特別なことをするわけでもなく、本当に日々今まで積み重ねてきたことを愚直にやり続けるだけです」

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今年10月に節目の30歳となるポープは、東京ヴェルディでプロキャリアをスタートさせた後、川崎フロンターレをはじめ、各クラブを渡り歩き、今季にFC町田ゼルビアから横浜に加入した。自身のキャリアは苦難の連続だったと振り返る。

「去年の最後はJ2のベンチだったりしたなかでも自分を信じて、苦しい時期もありましたけど、やり続けることでこうやってどんどん道は開いていくというか。強い気持ちを持って自分で切り開いていくのがサッカー選手の人生だと思います。ゴールキーパーは4人いて1人しか出られないですし、そういう中でもどれだけ自分を信じられるか、どれだけ日々大切に過ごしていけるのか。そういうことは本当に大切。

自分は川崎を出てから、本物のレベルを知れて、そこに追いつきたい、追い越したいという気持ちを持って、毎日地道にやってきたので、こういう舞台に繋がったのは本当に感慨深いです。今日も自分の中で色んなことを思い返しながら、PK戦の場面を迎えられたので、悔しい思いや、辛い時期を乗り越えてきた自分自身のことが本当にパワーになりました。今まで我慢できて良かったなとすごく思います」
ACLは2023-24と年をまたいでの開催だ。ここまで辿り着くまでの長い道のりには、昨年にローンで加入し、正GKを務めた一森純(現ガンバ大阪)や、海外へ羽ばたいた西村拓真(現セルベット)ら、今はいない選手たちの頑張りがあった。

「ここまでは、僕が何かをした、何かをやった大会ではなかったので。自分は決勝トーナメントからで、色んな人の思いが積み重なってここまで来れていると思いますし、そこに対しては本当に感謝しています」

思い返せば1年前、浦和レッズが出場権獲得から、足掛け3年に渡る戦いの末にACL制覇を果たした際、伊藤敦樹は「多くの今いない選手が関わっている大会だった。本当にこのタイトルの重みは素晴らしい」と口にした。

同じくあらゆる人たちがバトンを繋ぎ、決勝まで勝ち上がったマリノスは、感謝の思いを胸に、まだ見ぬ最高の景色を共有できるか。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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