鈴木亮平主演『シティーハンター』が配信開始!Netflixプロデューサーが語る、原作へのリスペクト

By 山本 敦

単行本の累計発行部数は5,000万部を突破。1980〜90年代にはテレビアニメも一世を風靡した人気コミックスの「シティーハンター」がNetflixの実写映画として令和の時代に蘇ります。俳優の鈴木亮平さん演じる主人公の冴羽 獠が、現代の新宿で大暴れ。安藤政信さんが演じる相棒・槇村秀幸と息の合ったコンビ、ヒロイン・槇村 香役の森田望智さんと繰り広げるスリリングなガンアクションなどが見どころです。4月25日(木)から始まる世界独占配信に向けて、エグゼクティブプロデューサーである髙橋信一氏にNetflixが送る最新の『シティーハンター』に懸ける思いをインタビューしました。

髙橋信一●たかはし・しんいち…Netflixコンテンツ部門 ディレクター(実写)。2020年入社。Netflixの東京オフィスを拠点に、日本発の実写作品での制作及び編成を担当。2022 Asian Academy Creative AwardsにてBest Feature Filmを受賞した 『浅草キッド』や『桜のような僕の恋人』『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』『シティーハンター』などのNetflix映画、「新聞記者」「ヒヤマケンタロウの妊娠」「御手洗家、炎上する」「地面師たち」「極悪女王」、Netflix初の日米韓チーム共同プロデュースを行った「ONE  PIECE」などのドラマシリーズ、「未来日記」「LIGHTHOUSE」「トークサバイバー」シリーズなどのバラエティ作品のプロデュースを担当。

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原作ファンも魅了する「新しい『シティーハンター』」が誕生した

──まずは映画『シティーハンター』が完成した手応えを聞かせてください。

髙橋 鈴木亮平さんと『ひとよ』という映画でご一緒させていただいた時に、亮平さんから「いつかシティーハンターの冴羽 獠を演じてみたい」というお話を聞いていました。当時すぐには実現しなかったようなのですが、私がNetflixに入社してから数か月が経ったタイミングで、制作会社の方から企画のご提案をいただきました。

実写化はとても難易度の高い内容でした。実際に私がNetflixに入社して以来、ほぼ開発・製作に3年間という最も長い時間をかけて作った映画です。だからこそ、とても充実した手応えがあります。監督やスタッフ全員で作り上げた作品なので、本当に感慨深い思いです。

──プレビューを拝見しました。私もずばり「シティーハンター」世代ですが、大満足です。めちゃくちゃ面白かった! キャストの皆さんがはまり役だし、まったく違和感のない「新しい『シティーハンター』」でした。

髙橋 ありがとうございます。まさにシティーハンター世代の方々に、「シティーハンターらしさもありながら“新しい”」と感じていただきたかったので、本当にとてもうれしいです。原作者の北条 司さんとも何度も脚本について打ち合わせをする機会をいただきました。北条さんには「実写は実写だから、シティーハンターを自由に映像化してください」と温かく背中を押していただきました。「でもまあ、そうは言ってもシティーハンターらしさを無視するわけにはいかないので……」とおそれ多く思いながら、いろいろと模索しました。シティーハンターというコンテンツに新しく出会う方々を意識しつつ、原作やテレビアニメからのファンの方々にも納得してもらえるシティーハンターの魅力を最大化し、バランスをどこで取るべきか、制作チーム一同で慎重にディスカッションを重ねてきました。

鈴木亮平&森田望智、魅力的なキャストが選ばれた背景

──人気の原作を映像化するうえで、困難もあったのでしょうか。

髙橋 そうですね。原作のシティーハンターには、今から見ればある種エキセントリックとも言える80年代独特の世界観や価値観が含まれています。でも現代の価値観を基準にして、シティーハンターの面白みを削り取ってしまうと、私たちが今シティーハンターを映像化する意味が失われてしまいます。作品の「らしさ」を活かしながら、現代に製作すべき『シティーハンター』をイチから構築しました。当社の試写室に北条さんを迎えて、完成した作品をご覧いただいた時に「とにかく面白かった」とお墨付きをもらえたことがとてもうれしかったです。

──鈴木亮平さんの冴羽 獠はもちろんですが、槇村 香を演じた森田望智さんをはじめ、キャストの皆さんがとても魅力的です。

髙橋 森田さんのキャスティングに関しては、まさに私とほかのプロデューサー陣から監督に進言しました。Netflixの作品では「全裸監督」にも出演されている森田さんは、なかなか類を見ない憑依型の役者さんだと感じています。私もオフとオンで、森田さんの印象が「別人では?」と思うほどに違います。槇村 香という役にも、ファンの皆さんが期待するキャラクターが憑依したように演じてほしいという期待を込めてオファーしました。

森田さんはトレードマークの長い髪を切って、初めてのショートカットで役作りに挑んでくださいました。制作が始まった直後は、鈴木亮平さんとの掛け合いなど役作りに試行錯誤されている様子でしたが、最終的な到達点はまさしく「香そのもの」というか、ファンの皆様にも本当に深いところに刺さる槇村 香になっていると思います。感謝しています。

──原作の漫画やアニメの槇村 香が「実写で描かれたらまさしくこうなる!」というイメージの通りでした。そして物語を彩る悪役(?)の俳優陣もすごく冴えていましたね。皆さんがとても素敵です。

髙橋 ありがとうございます。キャストの皆さんと一緒に作品のイメージを共有しながら、衣装も含めて丁寧にキャラクターを作り込んだ甲斐があります。

映画の撮影には新宿歌舞伎町の全面協力が得られた

──物語の舞台である新宿歌舞伎町の街並みがとてもリアルで生々しかったと思います。シティーハンターを見た後に新宿を歩いてみたら、今にも向こうから冴羽 獠が歩いてくるような気分になりました。

髙橋 ここまでのリアリティが出せた理由は、新宿区の皆様から多大な協力をいただいたからです。新宿歌舞伎町は一般の方々の往来がとても多い東洋一の繁華街です。そのため、基本的には映画撮影の許可がとても下りにくい場所です。

ところが今回は「シティーハンターであれば」と、原作を愛する商店街の皆様に熱意を持って迎えていただきました。制作チームが「新宿で撮りたいんだ」と意を決して、新宿行政関係者の方々など関係各位に向けて丁寧に説明と交渉を進めてくれたおかげでもあります。ある種の特別な許可をいただいて、セットではなく「ホンモノの歌舞伎町」での撮影が実現しました。北条 司さんの「シティーハンター」だからこそ成し得たことだと思っています。

──物語の中で、特に髙橋さんがこだわりを込めたシーンを教えてください。

髙橋 シティーハンターのファンの皆様は、恋人以上・恋人未満というか、ある種特別な「獠と香の関係性」に愛着を持たれていると思います。でも今回のシティーハンターは、2人の関係性が構築される前日譚です。獠が相棒である兄の槇村秀幸を失って、香と新しく関係を築いていく「喪失と再生」の物語を、ファンの皆様に納得してもらえるようにどう結実させるか。ここに私は一番こだわりました。あとはセリフ回しも、獠と槇村兄妹による”あうんの呼吸”が成立するよう、監督やキャスト・スタッフの方々が練り上げてくれました。

獠のキャラクターを強く表すようなシーンのいくつかは撮影にもこだわっています。例えば冒頭のアクションシーンや、マットで階段を滑り降りて、窓ガラスを突き破って飛んでいくシーンとか。「これぞシティーハンターの世界観だ」と、胸を張ってお見せしたい場面は意識して作り込んでいます。映像の尺としては15〜20秒くらいの短いシーンなのに、撮影は丸2日かけていたりもします。このシーンがなければ制作がすごく楽になるのですが……(笑)。でも、こういうシーンがあってこそのシティーハンターだと思っています。

あとは亮平さんの努力の賜物でもあるのですが、冴羽 獠は「凄腕のスイーパー」なので、銃さばきに慣れていないと不自然です。亮平さんには本当に多大な時間を割いてもらい、ガンアクションをモノにしていただきました。ここまでのガンアクションのある作品は、日本においてなかなかできないチャレンジだったので、亮平さんと一緒にこれを実現できたことがとてもうれしいです。

エンディングテーマはもちろん「Get Wild」

──エンディングテーマにTM NETWORKの「Get Wild Continual」が流れた瞬間の感激もひとしおでした。やっぱこの曲だよね! という安心感みたいなものでしょうか。多くのファンの期待に応える選曲だと思います。

髙橋 シティーハンターを今実写の映画にするにあたって、「Get Wildを使わない」という選択肢は僕自身がイメージできなかったです。日本だけでなく世界に向けて配信される作品とはいえ、多くのファンに愛されてきたコンテンツの価値をしっかりと後世に残したいと思ったポイントの1つでしたね。

──しかも、今回はTM NETWORKが新規に演奏・録音した楽曲ですよね。

髙橋 そうなんです。TM NETWORKの皆様はこれまでに何度かGet Wildをアレンジしたり、新たに録音もされたりしていますが、小室哲哉さんには、今回のシティーハンターが映像も現代の新宿歌舞伎町を舞台にして作ることをお伝えして「令和版」の新しいGet Wildをお願いし、やりとりをされてもらいました。僕たちがGet Wildという曲に抱いているイメージも大切にしようということで、イントロに関してはできる限りオリジナルに忠実な演奏にしていただきました。ラストシーンの後も、物語の余韻に浸ってもらえるエンディングになったと思います。

Netflixの「クリエイター・ファースト」精神に込められた真意

──作品とは少し離れますが、Netflixのプロデューサーとはどんなお仕事なのでしょうか。髙橋さんのキャリアの中で、Netflixでの働き方はどのように違いますか。

髙橋 私が所属するNetflixのコンテンツチームではストーリーテリングに重点をおいた作品づくりに注力しています。コンテンツチームと並行してプロジェクトに関わる、制作進行、ポストプロダクション、VFX(視覚映像技術)、広報宣伝のチームなど、社内専任のプロフェッショナルがいます。それぞれが良い形で分業制をとりながら協力関係の中で作品をつくるところは、Netflixが他の現場と大きく違うと言えるかもしれません。

私はNetflixに入社する前は映画会社でプロデューサーの仕事に就いていました。当時、映画やドラマなど年間に4本前後の制作が限界でした。もっと作品をつくりたいという思いもありながら、物理的・時間的な限界に突き当たることがありました。Netflixには新しいことに挑戦しながら、もっとつくりたい、見たことのない物語をつくりたい、という創作意欲を満たしてくれる環境があります。今年は既に発表済みの作品として、「地面師たち」「極悪女王」「トークサバイバー!シーズン3」などが控えていますし、来年以降も多くの作品を準備しています。

──以前、Netflixには才能のあるクリエイターの意欲的な作品を視聴者に届け続ける「クリエイター・ファースト」な環境とスピリットがあると聞いたことがあります。

髙橋 自分の経験として言えば、視聴者の期待に目を向けながら、誰も見たことがない新しいものをつくることに挑戦するクリエイターをリスペクトする土壌がNetflixにはあります。Netflixの強みは、クリエイターが意図する映像表現を、全世界的な制作ノウハウや技術でサポートすることで、クリエイターが作品づくりに集中できる環境を最大限整備していることころです。こうすることで作品の魅力を最大化でき、結果として視聴者の皆さんにも喜んでいただけるクオリティの高い作品が日本の視聴者はもちろん、世界にも届いていくと思っています。

髙橋プロデューサーが愛用するガジェットとは

──ではGetNavi webにちなんで、髙橋さんがお仕事で活用されているガジェットがあれば教えてください。

髙橋 ソニーのワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」を愛用しています。移動中に映像をチェックしたり、ラジオを聴くためなど1日中装着しています。デスクワークや資料を読む時には、音楽をかけずにノイズキャンセリングをオンにして耳栓のように使うこともあります。

仕事環境にはデルの40インチ曲面大型ワイドモニター「U4021QW」を置いています。さまざま資料を1画面に表示して作業をすることも多いので、本機を2台使いにしてデュアルモニターで作業をこなしています。正確にいうとノートパソコンの画面も使っているのでトリプルモニター環境ですね(笑)。

デスクワークが長く続くので、どうしても肩が凝ります。日々の体のメンテナンスにはパナソニックの「コリコランワイド」が欠かせません。使い勝手がとても手軽で本当に助かっています。また仕事というより趣味として、フジフイルムのミラーレスデジタルカメラ「X-S20」を愛用しています。本機の「フィルムシミュレーションモード」が好きすぎて手放せませんね。

──さまざまな作品を手掛けている髙橋さんですが、情報をインプットされるために毎日の生活の中で大事にされているルーティンはありますか。

髙橋 そうですね、僕自身はGetNaviさんも含めて雑誌はかなり多く読んでいる方だと思います。雑誌は自分の興味のある分野に限らず、女性誌なども定期的に目を通しています。自分がつくりたい作品を、お客様にどう楽しんでもらえるか、いつも楽しみながら考えていたいと思っています。そのためには情報のインプットを絶やさないようにして、今の時代の空気感や人々の暮らし、流行などにアンテナを張っているつもりです。

これからどうなる、獠と香の関係? 続編にも期待

──では最後に、これからNetflix映画『シティーハンター』をご覧になる方々に、髙橋さんからのメッセージをお願いします。

髙橋 もしも現代に冴羽 獠がいたらこうなるのでは? という世界観を、原作の魅力に基づきながら、鈴木亮平さんをはじめキャストの皆様、監督とスタッフ全員が一丸になってできた作品だと自負しています。

ある時、僕が原作者の北条さんとお話ししていたら、北条さんが「実写で香の“100トンハンマー”を再現するのは絶対に無理だよね」とおっしゃっていました。まあ、そうなんですけどねと思いながら、僕たちが100トンハンマーに後々なるであろう「ルーツ」を本作で登場させました(笑)。言ってみれば「エピソードゼロ」的なエッセンスを、実写化は難しいと考えられていたエピソードも含めて、本作のいろんなところに散りばめたつもりです。

もう1つ例を挙げると、香が初めて獠の事務所を訪れて、地下の射撃場まで行くシーンがあります。最初、僕たち制作陣はここで香の足がどうして射撃場に向くのか、シーンの整合性を取れずにいました。苦悶していたところ、北条さんから「香なら射撃場だって分からないまま、いろいろなものを探しに行って偶然射撃場を発見してしまう……という流れがあり得るんじゃない?」というアドバイスをいただいて、本作の場面になりました。北条さんとのコラボレーションによって生まれたシーンにもぜひ注目してほしいです。

──気が早すぎるかもしれませんが続編も期待しています!

髙橋 ありがとうございます。獠と香の関係性がこれからどのように変化していくのか、ファンの方々にも楽しみにしていただけるのであれば、僕自身もぜひ続きを見てみたいですね。

Netflix映画『シティーハンター』

4月25日(木) Netflixにて世界独占配信

(STAFF&CAST)
原作:北条 司「シティーハンター」
監督:佐藤祐市
エグゼクティブプロデューサー:髙橋信一(Netflix)
プロデューサー:三瓶慶介、押田興将
脚本:三嶋龍朗
エンディングテーマ:「Get Wild Continual」TM NETWORK(Sony Music Labels Inc.)
原作協力:コアミックス

出演:鈴木亮平 森田望智 安藤政信
華村あすか 水崎綾女 片山萌美 阿見201
杉本哲太 迫田孝也 / 木村文乃 橋爪功

Netflix作品ページ:www.netflix.com/シティーハンター

撮影/中田 悟

© 株式会社ワン・パブリッシング