岩手・盛岡、2023年宿泊客数過去20年で最多 米紙の紹介、コロナ5類移行が追い風 ブランド確立へ事業展開「地道にリピート客増やす」

商店街を歩き、市民と言葉を交わす訪日客=2023年4月、盛岡市大通

 盛岡市の2023年の市内宿泊観光客数が107万4983人(速報値)となり、過去20年で最多を記録した。新型コロナウイルスの5類移行に加え、同年1月に米紙ニューヨーク・タイムズの「訪れるべき観光地」に選出され、国内外の認知度が高まったことが数字を押し上げたとみられる。

 市内宿泊観光客数はコロナ下の20、21年は60万人台で推移したが、22年に約91万人に増え、回復傾向にあった。23年の外国人観光客数は約6万人で過去最多ではなかったが、前年の約9倍だった。
 JR盛岡駅構内の観光案内所では、米紙で紹介された場所への道順を問われることが圧倒的に多かったという。23年度の対応者数は計約8万4000人。臨時で2カ所に増設し、前年度の約3万人から急増した。国別では花巻空港と直行便を結ぶ台湾が最も多く、米国はコロナ前に比べて約1.8倍に増えた。
 国内客からは東京から新幹線で2時間強という地の利が改めて見直された。関東地方から訪れた客の多くが「こんなに早く来られるとは」と驚いたという。
 盛岡観光コンベンション協会の石橋浩幸専務理事は「脚光を浴び、国内客からも『すぐに行ける』というイメージが付いた。青森や秋田を最終目的地として途中下車する客も多い」と話す。
 市は一過性のブームで終わらせまいと、米紙で「歩いて回れる宝石のよう」と評された街並みを含めた「盛岡ブランド」の確立にいそしむ。23年は移住や定住に関する相談件数も増加。本年度の新規事業は東南アジアの旅行博出展などにとどまるが、地域おこし協力隊の活用など観光以外でも「選ばれる街」になるよう事業を展開する。
 石橋さんは「元々観光都市でなく、京都や鎌倉にはかなわない。『まずは歩いてみて』というのが盛岡に合っており、経済効果も生まれる。リピート客を増やせるよう地道にやっていくのが重要だ」と強調する。

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