焦点:国内生保、24年度の円債は「純投資」目線に 環境改善や規制対応一巡で

Tomo Uetake

[東京 25日 ロイター] - 国内生命保険各社は2024年度の資産運用で、日本国債への投資では利回り水準を冷静に見極めながら臨むスタンスを打ち出した。日銀が先月にマイナス金利政策を解除し、市場では年内の追加利上げも意識される中、運用環境は改善してきている。一方、新たな資本規制に対応するための買い需要は一巡し、「純粋な投資目線」で妙味を判断するとの声が聞かれた。

<「利回り1.9%台の30年国債」には一定の妙味>

生命保険契約という超長期の円建て負債を抱える生保各社にとっては、健全性の観点から超長期国債が資産運用の柱となる。各社が主な投資対象に挙げる30年債の利回りは足もとで1.9%台半ばとなっており、大手生保の負債コストの平均利回りの1.8%程度を上回ってきた。

もっとも、現水準での超長期国債への投資意欲には強弱がある。最大手の日本生命は「魅力が出てきた水準と言える。今は着実に買っている」と話す。

一方、住友生命は「十分魅力的な水準」との見方については一致するものの、まだ金利上昇余地があるとの見方から「積極的・集中的には投資していない」とやや抑制的だ。

第一生命や富国生命も「利回りが2%を超えてくれば従来以上に妙味が出てくる」(第一生命の堀川耕平運用企画部長)との目線を示し、一段の金利上昇を待つ構えを見せた。

<規制対策が一巡、国債購入への「追い風」止む>

今年度の運用計画で特徴的なのが、国債の購入ペースの変化だ。昨年度までは年間購入予定額を均等に割った「平準ペースでの買い」を挙げる生保が多かったが、24年度はより投資妙味を重視し、メリハリをつけた買い方をするという会社が多い。

背景には、25年度に導入される新たな資本規制(経済価値ベースのソルベンシー規制)への対応の動きが一巡してきたことがある。

日本生命の都築彰執行役員財務企画部長は、過去3─4年は負債と資産のデュレーション・ギャップを減らすというリスク削減目的で、金利が低くても超長期国債をしっかり買ってきたと説明し、「それが現在は金利リスクがだいぶ縮小し、純粋な投資対象として利回りを見て判断できるようになった」と明かす。

明治安田生命、住友生命、かんぽ生命もまた、新資本規制への対応にめどが立ったことを理由に、平準ペースの買いから「純粋な投資目線」での買いにシフトする方針を掲げている。

<年内1回の追加利上げ予想、30年金利は2%超で上昇ペース鈍化>

日銀の金融政策については、年内1回の追加利上げがあるとの想定に基づき、30年金利にも上昇圧力がかかるとの予想が多い。明治安田生命では「追加利上げに伴い、2%は超えて2.1─2.2%まで上昇するだろう」(北村乾一郎運用企画部長)との見通しを持っている。

一方、30年債利回りが2%を超えてくれば、投資妙味を理由とした生保勢の買いも増えるとみられるため、金利上昇ペースは鈍化しそうだ。

住友生命の増田光男運用企画部長は「(生保の買いが加速すれば)金利の上昇を一定程度抑える効果はあるだろうが、機関投資家としては自ら金利を押し下げるような買い方をするとは思えず、市場を壊さない程度の買いになるのではないか」との見方を示した。

日本生命の都築氏は「金利が上がってきたことは生保の運用にとっては非常にプラス」と評価。同社のポートフォリオは非常に大きく、すぐに収益が上がるというわけではないとしながら、「今年度は円債を増やす局面からポートフォリオの耐性を高めるフェーズへのシフトを図っていく中、投資しやすい環境になった」と話している。

※「国内主要生保の2024年度資産運用計画・市場見通し」一覧はこちらでご覧いただけます[L3N3GP0K1]。

(植竹知子 取材協力:金融マーケットチーム、編集:平田紀之)

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