「ホームでできるのは一生に一度の機会」。フランス代表の主砲ゴベアがパリ五輪へ闘志満々「決勝でアメリカを倒すことを夢見てきた」<DUNKSHOOT>

4月17日、USAバスケットボールは、今夏のパリオリンピックに出場するロスター12選手を発表。レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)にケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)といった超豪華メンバーの参戦が決定した。

カメルーン出身でフランス国籍を取得していたジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)も、昨年10月の公表通りアメリカ代表の一員に名を連ね、大会5連覇を目指すチームで先発センターを務めることが予想されている。

FIBAランキング1位のアメリカの対抗馬には、昨年のワールドカップを制した同3位のドイツ、W杯で準優勝を果たし、ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)の出場が期待される同4位のセルビア、W杯銅メダルで多くのNBA選手を抱える同7位のカナダなどが挙げられる。

一方、2021年夏の東京オリンピックで、アメリカにとって最大の脅威となったフランスも見逃せない。昨年のW杯こそまさかの18位に終わったとはいえ、2019年のW杯準々決勝(89-79)、東京五輪の初戦(83-76)で2度にわたってアメリカを下し、決勝戦でも5点差の好勝負(82-87)を演じていた。
自国開催のパリ五輪ではルディ・ゴベア(ミネソタ・ティンバーウルブズ)、ニコラ・バトゥーム(76ers)、エバン・フォーニエ(デトロイト・ピストンズ)といった常連組に加え、若き怪物ヴィクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)が満を持して参戦する見込み。エンビード争奪戦はアメリカに譲る格好となったが、ファンの期待は高まっている。

もちろん、選手たちも地元で悲願の金メダル獲得に向け、並々ならぬ闘志を燃やしている。

23日にフランスのメディア『Le Monde』に公開された記事の中で、ゴベアは「まだ小さかった頃、NBAチームのジャージーを身にまとっている自分をよく想像していた。それと同時に、フランス代表チームのことも夢見ていた」と回想し、打倒アメリカへの想いを語っている。

「俺はいつだってアメリカを倒すことを夢見てきた。そして俺たちは2019年のワールドカップ(準々決勝)で実現させた。フランス代表チームとして初めてのことだったんだ」 6月末に32歳を迎えるビッグマンは、現在はウルブズの先発センターとしてサンズとのプレーオフ1回戦中で、2試合を終えてシリーズ平均38.4分、16.0点、12.5リバウンド、2.0アシスト、1.50スティールをマーク。アメリカ代表のデュラントをフィールドゴール成功率44.4%(4/9)、デビン・ブッカーを同16.7%(1/6)に抑えており、ペイントエリアから3ポイントラインまで、広範囲にわたって高い守備力を発揮している。

フランスの強みは、216cm・117kgのゴベア、224cm・95kgのウェンバンヤマによるツインタワーであることは間違いないだろう。特に守備ではNBAと違って3秒ルールがないため、両者がペイントエリアに陣取ることが可能。さらに2人とも圧倒的なサイズがありながら、ペリメーターや3ポイントラインまでカバーできることは脅威でしかない。
もちろん、今大会のアメリカにはエンビードが加わり、高さでも勝負できる布陣な上、タレント力は歴代でも屈指。7月27日から8月10日にかけて開催されるオリンピックで5連覇を目指す現役最強軍団は、優勝候補筆頭だ。

それでも、自国開催の大舞台に向けて、ゴベアの自信も揺るがない。

「俺は決勝でアメリカを倒すことを夢見てきたんだ。自分がオリンピック・チャンピオンになるんだと思い描いてきた。ホームでそれができるのは一生に一度の機会だからね」

現在はプレーオフの真っ只中のため、いま戦っているシリーズ、目の前にいる相手を倒すことにフォーカスしている。だがいざシーズンが終われば、ゴベアは真夏の祭典に向けて、フランス代表の活動に邁進するだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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