約4万年前に起こった地球磁場変動 欧州地球科学連合

地球磁場は、太陽系外の様々な方向からやってくる宇宙線や、太陽風などから地球生命を保護する働きがある。宇宙線は生命維持に必要不可欠なDNAを破壊し、宇宙線被ばくが深刻になると生命は滅亡の危機に瀕する。また太陽風に直接さらされることで、地球上の大気は剥ぎ取られてしまい、生命が進化できない環境になってしまう。

だが地球の磁場は、恒久的な存在ではなく、磁場の存在形態は絶えず変化し、生命進化にも影響を及ぼしてきた。最近開催された欧州地球科学連合(EGU)総会で、4万1千年前に起こった地球磁場変動に関する新たな発見が明らかにされた。

この時の磁場変動では、磁場そのものが弱くなり、現在において北極と南極で安定している磁極が、不安定化し多極構造となっていたという。地球磁場において、強度や極の入れ替わりが起こることは、地球が誕生から46億年が経過した現在も生きた惑星である証拠であり、科学者の間では常識的な事実だ。

地球磁場変動の影響は、海洋堆積物中に存在する放射性同位元素の構成を分析することで明らかにできる。当然ながら、地球磁場の強度が弱まれば、宇宙線の影響が著しくなり、放射性同位元素の比率が増大する。特にベリリウム10は、地球磁場の強度との相関性が高く、その量を堆積層の堆積時期に応じて時系列的に調べることで、地球磁場強度の変動の歴史を理解できる。

今回発表された論文の著者であるドイツ・GFZポツダムのSanja Panovska氏は、4万1千年前の磁場変動により、ベリリウム10の平均生産率が現在の2倍となったことを発見したという。

このころの地球では、宇宙線の影響で多くの生命が絶滅の危機に瀕していたのかもしれない。その結果、地球のいたるところで食糧危機が生じていたことも、想像に難くない。

実は日本列島に人類が移り住んできたのが、今から4万年ほど前と考えられており、人類に限らずあらゆる生命が、食料が豊富な新天地を求めて地球大移動を始めていたのかもしれない。

今回の研究で用いられたベリリウム10分析は、太陽活動の歴史的変動の考察にも応用ができるため、それらの研究を通じて今後の太陽活動の変動を予測し、様々なリスクヘッジに役立てられていくことだろう。

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